買い出し ページ9
「二人で買い出し……、え、二人で?」
珠世さんに材料が書かれたメモを渡され、隣に立っている愈史郎と顔を見合わせた後、思わず聞き返した。
「なぜです!?」
「喧嘩した罰ですか!?」
二人で抗議をすると、珠世さんは呆れたような息を漏らした。
「荷物が多いから二人に頼んでいるのです」
「「往復します!!」」
声が揃って、互いに「真似すんなよ」という意を込めた顔を向け合う。
「愈史郎、Aは街に出るのは初めてですから、頼みますよ。仲良く行ってきなさい」
それだけ言い残して、珠世さんはピシャリと戸を閉め、行ってしまった。
***
お世話になっている珠世さんの頼みは断れない。
互いに不満を顔で表現しながら、街を歩く。
「フラフラするな。お前が迷子にでもなったら、珠世様に叱られるのは俺なんだ」
「わかってるよ、もう……」
こんな楽しくない外出は初めてだよ、と心の中でごちる。
外出と言っても、一人でか、善逸としかした事がないから、比較しようにも例が少ないのだが……。
思い出して、また胸が苦しくなった。
(─── 善逸、どうしてるかな……)
あの時の記憶はほとんど無いが、一つだけ脳裏に焼き付いている。
ほんの一瞬の記憶。
なんだか気が重くて、珠世さんには言わなかった。
泣いている善逸に、私は───。
「はあ、最低……」
「こっちの台詞だ」
声に出てしまった。
独り言とは思うはずもなく、すぐに愈史郎の反論が返ってくる。
内容はともかく、今はそれに救われる。
その憎々しい返答にイラッとしなかったら、この場に崩れ落ちる程のダメージを受けていたと思う。
「……愈史郎」
「無駄口を叩くな」
「なんか、今だけ君を好きになれそう」
盛大に「うげっ!」という顔を向けてくる。
(うん、逆の立場だったら、私も同じ顔すると思うよ…… )
「今だけな……」と、鬱々とした笑みを浮かべると、愈史郎は引き攣った顔で私から距離をとった。
(───わかる!逆の立場ならそうする!!)
距離をとったまま店に到着すると、「お前は待っていろ」と言い残して愈史郎だけ中に入っていった。
私も入りたかったけれど、近づきたくないのだろうから、我慢する。
(私から仕掛けちゃったし……)
転がっていた石ころを、ポケッと蹴る。
さすが都会だ。
夜でも人が多くて、賑わっている。
「──え…っ!?」
遠くを見ていると、人混みの中に黄色い頭が見えた。
迷わず私は駆け出した。
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時