同族嫌悪 ページ8
愈史郎はピタリと手を止めると、不満を最大限に表現したような顔を向けてきた。
「いや、だって……。ごめん」
そんなに顔って崩せるんだ、という衝撃を受けつつ軽く謝ると、愈史郎は再び背を向けて手を動かした。
自分も次の引き出しを開けて、中を覗き込みながら、
「……ていうか、当然知ってるよね。見たんでしょう?……あの時の……」
言いながら、その目に自分がどう映ったのかを聞くのが怖くなって、言葉を切る。
「どうした、感想を聞くのが怖くて漏らしたか?」
「お前さあ、まじお前……信じらんない!」
こいつ嫌いだわー、と再認識する。
愈史郎と話していると、どんどん口の悪さも移ってきて、嫌気がさす。
(もういい、このバカと口をきいた自分が間違ってた)
作業に集中しようとした時、愈史郎がポツリと呟くように言った。
「何を嫌がる必要がある」
再度視線を向けると、やはり背を向けたままだ。
「見た目がどうであれ、強いに越したことはない。文句を垂れるのは愚かだな」
「……は?あんたに何がわかる?自分の事じゃないからそう言えるんだよ」
イラッとて噛み付くが、愈史郎はこちらを見ようともしない。
「強ければ、鬼舞辻の脅威から珠世様をお守りできる。そうすれば、ずっと美しい珠世様を眺めていられるんだ!誰にも邪魔されずに!!」
(なにこの人、まじで気持ち悪いんだけど)
「それをいつまでもウジウジと……。だからお前は醜女なんだ」
「えー……、無茶苦茶だわ、その理屈……」
遠い目をしていると、急に雑巾が顔を直撃し、「ゔっ!」と、濁った声がもれる。
(は!?何してくれてんの!?)
驚いて愈史郎を見ると、厳しい目を向けている。
怒っているわけではない様子だが……。
「不平不満をもらす暇があるなら、マシな使い道でも考えたらどうだ!」
「愈史郎……」
彼なりの励まし方なんだろうか。
どんだけひねくれてるんだよ、とんでもないな。
だけど何となく……、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
私は頭に乗っかったままの雑巾をそっと手にとって、愈史郎へ歩み寄っていく。
微笑みを向ける。
考えてみたら、ここに来てから笑ったのは、今が初めてだ。
(ありがとう、愈史郎。……でも、でもね───)
「人の顔に雑巾投げてんじゃねぇよ!!!!」
思いっきり顔に雑巾をぶつけてやった。
その後、初の取っ組み合いの喧嘩へと発展し、珠世さんに叱られたのは言うまでもない。
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時