選択する道 ページ7
「─── 誰なんですか?」
珠世さんは一呼吸置いてから、落ち着いた口調で話し始めた。
「あなたを迎えに行く数日前、一通の文が届きました。差出人は、産屋敷耀哉。鬼殺隊を率いる、産屋敷家の九十七代目当主です」
「鬼殺隊の、最高管理者ってことですか」
「そうです」
「なによ、今更……」
(ずっと音沙汰がなかったくせに…… )
もっと早くこの暴走を阻止できたのではないかという批判心が邪魔をして、素直にありがとうとは思えなかった。
そもそもこんな事になるなら、さっさと討伐令でも下してくれた方が良かった。
「当然彼らは、Aが鬼舞辻の手に渡ることを阻止したがっています」
「私も、鬼舞辻の配下になる気は微塵もありません」
「ええ、そうね。そこで選択をしなければならないというのは────、
一つは、鬼殺隊本部に身を預けること。
二つ目は……、もし、それが辛いなら、ここ残っても良いのですよ。人を襲わないとはいえ、鬼が鬼殺隊に身を置くということは、当然偏見もある。思っている以上に厳しい目を向けられることでしょうから……!」
慈愛に溢れた瞳が、一瞬揺らいだように見えた。
珠世さんの優しさが沁みていく。
今はもう頭が働かない。
一気に情報を入れすぎて、処理しきれなかった。
「少し……考えさせてください」
「勿論よ。ゆっくり考えて」
重い足取りで、中途半端だった掃除の続きをしに向かう。
(はあ……、随分大事になったな……。一人静かに暮らしてたのが、まるで夢だったみたい)
あの頃は、一日中やる事がなかったから、思いっきり歌って、沢山本を読んで……、毎日その繰り返しだった。
(そんな時に、善逸がやって来たんだ……)
もの凄く怯えてて、かと思ったらいきなり求婚されたっけ。
改めて思い返すと、初対面でとんでもない話だけど、あの頃は本当に楽しかった。
(……もう戻れない、二度と)
部屋に戻ると、愈史郎が掃除の続きを引き継いで、テキパキと働いていた。
「遅いぞ醜女。珠世様と二人きりで話やがって……ずるい」
「ずるくない」
「ずるい」
「うざっ」
仕事を横取りされたので、新たにやる事を探して、薬となる材料の在庫をチェックし始めると、愈史郎がポツリと言った。
「行くのか、鬼殺隊に」
思わず手を止めて愈史郎を見た。
彼は背を向けたまま、雑巾で棚を拭いている。
「鬼狩りに関わると、ろくな事にならない」
それって……
「え、盗み聞き!?怖っ」
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時