己の正体 ページ6
「……知って、どうなるんです?どうせろくな事じゃない。結局周りを不幸にすることしか出来ないんですよ」
「それは違います」
いつもは穏やかな珠世さんが強く否定した。
「あなたが力を制御出来ないのをいい事に、鬼舞辻はそれを利用した。どんなに優れた力でも、悪用すれば良い結果にならないのは当然です」
私は押し黙った。
まるで母親に叱られているみたいで、懐かしい気持ちになった。
「向き合ってください。その力はあなたのものです。使い方を決められるのもAだけですよ」
「使い方……」
そんな事を言われたのは初めてだし、考えた事もなかった。
そもそも、自分は無力だと思っていたから。
「あの男は臆病者です。何としてでもあなたを手元に置いておきたいはず」
「兵器って、そういう意味……」
ポツリと呟いた言葉に、珠世さんが眉を寄せた。
私は、書庫での出来事を話した。
「あの時、鬼舞辻は私の事を兵器だって言ったんです。燃料を作る為の材料も手に入った、と──」
『あとは火をつけるだけ』
鬼舞辻の声を頭の中で再生する。
(燃料は絶望、それじゃあ材料は───)
結論に辿り着くまで時間はかからなかった。
──── 善逸!!
全ては善逸と出会った時から始まっていた。
ずっと監視しながらも、鬼殺隊である善逸に手を出さなかったのは、利用するため。
希望を作り、それを壊させた。
全部、善逸を使った──
「……許せない。絶対に、許さない!」
怒り任せに爪を立てて胸を抑えると、真っ白な洋服に鮮血がじんわりと滲んだ。
その手に珠世さんのものが重ねられ、それ以上傷が深くなることはなかった。
「何よりも、その穴を埋めなければならない。時が経てば、今までとは比べのもにならない程の空腹感と虚無感に襲われるでしょう。厳しい事を言うようですが……、そうなれば、今度こそ人間を巻き込みかねない……」
「時限爆弾、みたいですね」
自嘲気味に笑うと、珠世さんは「ごめんなさい」と眉尻を下げた。
「私では、Aの心を治してあげる事ができません。いくら医者でも、そればかりは難しい……」
「私、耐えてみせます。今までもそうしてきたんだから。きっと大丈夫」
珠世さんは悲しげに目を伏せた。
なぜそんな顔をするのか分からなかった。
少し間を置いて、重々しく口を開く。
「A、あなたを助けた依頼主の事を話します。そして、あなたは進むべき道を選択しなければならない──── 」
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時