本当の理由 ページ50
しん、と静寂が包む。
ふ、と笑みがもれて、それを破った。
「ていうか、許可なんて求めてないから」
「だからなんでそういう────!」
扉が開く音で会話は中断され、二人はそちらへ目を向けた。
「お取り込み中すみませんが、目を覚ましたのならちゃんと報告してくださいね」
胡蝶しのぶが笑顔を貼り付けて立っていた。
気まずくなって二人はそれぞれ正反対へ視線を背ける。
「Aさんは痣の具合を見せてください。我妻くん、せっかくお見舞いに来たのに申し訳ないのですが、
善逸は無言のまま部屋を出ていった。
しのぶと二人になって、Aは小さく溜息をもらすと、衣服を脱ごうとボタンに手をかけながらベッドに戻った。
「喧嘩、ですか?」
「……まあ、そんな感じでしょうか」
「ふふっ……」
「いや、笑い事じゃ……」
笑われたので弱々しく反論すると、しのぶは身体の痣を診ながら関心したように言った。
「あの我妻くんが女の子を相手に怒ったりするんですね。怒られたりぶたれたり、泣いてゴネて縋ってる所しか見た事がないので、少し意外でした」
「駄目な所しかないじゃないですか」
「そうですね、けれど全て事実ですから」
クスリ、と小馬鹿にしたように笑った。
それがなんだか気に食わなくて、咄嗟に反論する。
「でも、それが覆るくらい、いい所も沢山あるんです!」
「まあ!例えばどんな?」
「優しいし努力家だし、泣く程怖がるのにそれでも鬼に立ち向かっていくんです!生身の人間でそれを出来るなんて、十分勇敢なんですよ!」
しのぶは面白いものを見るような目で私を見上げている。
感情的になっている私はそれに気付かずに、堰を切ったように言葉を吐き出す。
「他の人がどう思ってるかは知りませんが、少なくとも私は知っています!善逸は凄い人なんだって!!……私の、目標なんです!」
それが強くなりたい本当の理由。
「そこに行きたいんです。隣を、歩きたい……もう待つのはうんざりなんですよ」
-----------------------
しばらく扉の前から動けなかった。
一旦退室しろと言われたから診察が終わるのを待っているつもりだったのに、思わぬ会話を耳にして動揺した。
そんな事を思っていただなんて知らなかったから、金槌で頭をぶたれたような衝撃だった。
すぐ泣いて失敗する俺に誰も期待なんかしない。
でも、彼女は全く逆の事を言う。
俺はそっと、その場を離れた。
287人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時