強運 ページ46
「二人とも無事か!?……A!?」
遅れて到着した炭治郎が、座り込んでいる私に駆け寄った。
「その顔……腕も!どうしたんだ!?……これ、藤の花か!?」
私は小さく頷く。
伯屍楼の顔に思いっきり擦り付けた時に、毒を吸い込んでしまい、呼吸が苦しい。
「藤の家紋の家に咲いてたやつか……なんて無茶するんだ!!」
「屋上……善逸が戦ってる……」
未だに衝突している音は続いている。
一刻も早く、炭治郎に加勢しに行って欲しかった。
「わかった!念の為、これを置いていく。何かあれば禰豆子が守ってくれるから。もう少し辛抱してくれ!」
「……大丈夫だから……行って……」
精一杯の笑みを向けると、炭治郎は真剣な顔で頷き、屋上へ跳んだ。
(……私だけだな………)
戦えないのは。
何の力も持たないのは……。
悔しくて、悔しくて仕方がない。
守られるのはもう……。
(申し訳ないけど、ちょっとだけ、休もう……)
その場に横になった。
なんとか毒を分解しないと今度こそ本気で死ぬ。
こればっかりは、身体の抗体に頼るしかない。
(運、だな……)
そう思いながら、全てのエネルギーを分解に当てられるよう、瞼を閉じた。
***
目を開くと、見覚えのある天井で、すぐに蝶屋敷だとわかった。
しのぶさんが用意してくれた、私専用の個室だ。
(い、いつの間に帰ってきた……!?)
少しだけ休んだつもりが、とんでもなく長い間眠ってしまったらしい。
(あの後、どうなった?善逸は、炭治郎は……、皆無事なの!?)
ベッドから降りると、ガクッと膝から崩れ落ち、床に手をついた。
手にはまだ、少しだけ青紫色の痣が残っている。
患者用の白っぽい衣服に着せ替えられていて、ズボンを少し下ろして太腿も確認する。
まだ痣はあるが、だいぶマシになっている。
(良かった、分解出来てる。……私は運が良い)
しかしすぐに、こうしちゃいられないと思い直して、ベッドの脚を支えに立ち上がる。
一刻も早く、みんなの安否を知りたい。
部屋を出ようとドアを開けると、突然目の前に善逸が現れ、同時に悲鳴を上げた。
どうやら丁度、同じタイミングで扉を開けようとしていたらしい。
「び、びっくりした……」
「し、心臓が口からまろび出るかと……」
それはないだろう、と思ったのは心に留めておく。
でも────、
(良かった……。善逸、無事で)
頭には包帯が巻かれているが、大事無さそうで胸を撫で下ろした。
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時