いつか陽の光を浴びて＊弐【我妻善逸】

後遺症で崩壊 ページ39

「なあA、もう十分だから頭を上げてくれよ……」

「そ、そうだよ。術にかかってたんだから仕方がなかったんだし……水かけられたのだって、気にしてないよ」


そういうことで、私、Aは絶賛平謝り中です。
おでこが地面と一体化せんばかりの土下座をしています。
こういう時、優しい言葉が逆に痛かったりする。
水でも唾でもかけて罵ってくれた方が楽だよ…ほんと……。


「いやもう、どんな顔していいかわからないんで！しのぶさんに、隊員が到着するまで鬼との接触はするなって言われてたのに調子に乗りました。勝手に行動した罰ですね！もう恥ずかし過ぎて穴に入りたい……もう日本海……太平洋に沈みたい。そして誰にもこの面を晒さずに深海魚と一緒に暮らすの……ふふっ、ふふふふふふ……」

「どうしたんだ？なぜそんな気持ち悪い笑い方をするんだ？」

「炭治郎……お前……」


せっかく善逸に会えたのに……！
こんな醜態さらしたうえに、迷惑かけて、水ぶっかけて、ほ、ほほほ頬ずりするとか……、ほんと何やってんの私！？何してんの！？

何より、あの時の事を謝りたくてここまで来たのに、もうそれすらも機会を逃してしまった。

しかもこの羞恥心で自分が何言ってるのかも分からなくなってきた。


(詰んだわ……詰んだよこれ……)


しかも、伯屍楼にされた事を思い出す度、叫ばずにはいられない程の後悔と羞恥心が津波の如く押し寄せる。

無抵抗だったんだ。だって術にかかっていたから！
でも……でも………！！

昼間ずっと歌わされたのはいいさ。
伯屍楼への愛の歌を……捧げ……


「いやぁああああああああ！！」


急に悲鳴をあげたから、二人がビクッと飛び跳ねた。
土下座のまま顔を覆って悶絶する。


「ど、どうしたんだA？」


私は顔を覆ったまま無言で首を振る。

(お願い、聞かないで……！！)


思い出したくないと思うと、次々出てくるものである。

伯屍楼の膝の上で向かい合って座り、耳元で恋人のように愛をささや……

「ぐっはあっ！！おえっ！」

「ぇえっ！？」
「ひいっ！？」


トドメは酷い。
私は奴の着せ替え人形だった。
毎日ドレスやら着物を着せ替えられた……つまり……は、はだ、裸を……


「ぎぃやぁあああああああ！！！！」

「な、なに！？なんなの！？どうしたの！？怖い！！」


頭を床に何度も打ち付けるが、痛いだけで効果はない。

遂に善逸がガクガク震えて炭治郎の後ろに隠れた。

それにまたショックを受けた。

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