本音 ページ37
「A!」
痣の少年が立ち上がった。
けれど、興味はやはり黄色い方。
その黄色い花が肩に絡みついてきた。
「Aちゃん!ううう嘘だよねぇ!?ここここ婚約だなんて………嘘でしょう!?何されたの?なにか言えない事情があるんだよねぇええ!?」
「私は店長の息子さんと結婚します。彼を心から愛しています。もう邪魔をしないで下さい」
伯屍楼に言われた事をそのまま転用する。
顔には笑顔を貼り付けて。
花がしおしおと枯れたように足元に転がった。
(……大変……お水をあげなくちゃ……)
テーブルの上にあったグラスを手に取り、萎れたタンポポにかけた。
「A!な、なんて事をするんだ!?」
炭治郎が立ち上がり、客達の注目が集まった。
突然水を浴びせられて、善逸は絶句している。
傍から見れば、こっぴどく振られた男の画である。
それを見た店長が安堵したように声を掛けた。
「ほ、ほらね、言ったろう?ウチの息子と上手くいってるんだよ」
「それは嘘です!あなたは嘘をついている!」
「嘘なんかじゃ……!これを見てもまだ納得しないのか?親族とはいえ、これ以上騒ぐなら警察を───」
スっと、Aがしゃがんで善逸を覗き込んだ。
心配そうに髪を撫でる。
「元気ない……お水じゃないの?お日さまかな?」
「……へ………?」
善逸は涙目になりながら、意味がわからずAを見つめた。
Aは悲しげに視線を落とした。
「だけど……お日さまには当ててあげられないの。あの部屋じゃ、遮られているから……でも……」
Aは慈しむように目の前の花を抱いた。
愛おしそうに頬を寄せ、溢れる感情が雫になって流れ出た。
「この花がいい……どうしても、これがいい……」
誰もが呆気にとられているなか、善逸がAの手を掴んで立ち上がった。
目が血走っている。
引っ張られてAも立ち上がると、善逸がムンッと横抱きにして店から全速力で出ていった。
炭治郎もハッとして、禰豆子が入った箱を背負うと、出口で一礼して善逸同様逃走した。
客達は店でやってる見世物と勘違いしたのか、パラパラとした拍手が鳴り出し、次第に安定したものとなった。
残された店長は、客達の勘違いを利用して、あたかもそうであったかのように笑顔を振りまいてやり過ごしたが、
(クソッ!クソッ!クソッ!あの糞ガキ共どうしてくれんだ!!俺があいつに殺られてしまうじゃないか!!)
店の裏に戻るなり、頭を抱え蹲った。
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時