再会 ページ32
『カァア!急ゲェ!!連絡ガァ途絶エタ!急ゲェエ!!』
藤の家紋の家で着替えていると、鴉が煩く鳴いた。
チュン太郎も忙しなく飛び回る。
「潜入の連絡が?急がないと───」
「おま、禰豆子ちゃん連れてくの?」
「置いてはけない」
男が行くような店に?と言いかけたが、状況を考えて善逸はそれ以上言うのを止めた。
***
「……なあ、善逸───、」
炭治郎が目をやると、善逸は緩みきった笑みで、女給に愛の言葉を語っている。
(善逸………)
こちらの声は全く届いていないようで、炭治郎は溜息をついた。
(潜入している人を探さなきゃならないのに、遊んでる場合じゃ─── )
「……すみません、私ではつまらないですか?」
炭治郎に付いている女給が、溜息の意味を勘違いして謝るので、慌てて両手を振る。
「そ、そんな事ないですよ!こういう場所慣れていなくて……すみません」
女給はホッとしたように微笑んで、炭治郎のカップにお茶を注いだ。
「だけど、もうすぐ生演奏が始まりますよ。少し前に入ったばかりのコなんですけど、凄く声が綺麗で……たちまち人気が出ちゃったんですよ!」
「へぇー!それは楽しみです!」
女給が話題を振り、空気が少し和らぐ。
お客さんを退屈させないという姿勢が彼女達にはある。
女給は椅子の隣に置いてある禰豆子が入った箱に目を移した。
「ところでこの箱、随分大きな荷物ですね……?良ければお預かりしましょうか?」
「いえ、これは大事なものなので、大丈夫です!」
そう言って断ると、店の照明が消えた。
「ひゃっ!?なになに!?停電!?」
横で善逸が情けない声をあげる。
しかしすぐに舞台にスポットライトが当たり、店内の客は音合わせをするバンドへ集中した。
「演奏、始まりますよ!」
女給が炭治郎にこそりと言った。
炭治郎と善逸も口を噤んで、どきどきしながら開始を待つと、
炭治郎がこれまで聴いてきた曲とはかけ離れた、不思議な音楽だ。
『なぜ この胸は こうさみしい』
歌が入ると、片隅に置かれたピアノにライトが当たった。
炭治郎は目を見開いた。
「……なん、で………」
善逸が呟く声が耳に届いた。
視線を向けると見開かれた目には溢れるものがあった。
『なぜ 君と逢う その日だけ楽しい
なぜ 別れ路に 出る吐息が
君の答えおば なやむ身に与えよ』
深紅のドレス。
ピアノの上に腰掛けた少女が歌う。
その目に光を宿さずに…
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時