いつか陽の光を浴びて＊弐【我妻善逸】

潜入調査 ページ28

「Aさんは夜しかいないの？昼間も会えたらいいのに……」

「でも……昼間はお仕事でしょう？」

「そうだけど……ずっと、君の事を考えてるよ」

「は、は……う、うれしー……私もももです……」

「だ、大丈夫？なんだか白目になって……Aさん……！？」



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拝啓

しのぶ様。

調査を始めてからひと月経とうとしていますね。

慣れない仕事ですが、なんとか続けられています。

女給とは思った以上に難しいお仕事ですね。

お客様に夢を見せる為、偽りの言葉を本物のように囁く。……私には向いていないようです。

騙してお金を貰っているみたいで心が痛みます。

ですが、歌を歌っている間だけは、そんな罪悪感も忘れられます。

女給達やお客様さんの話では、消えた女性達は駆け落ちしたとか、こんな仕事だから入れ替わりが激しいとか、そんな噂ばかりです。

鬼の気配も感じません……。それが逆に不気味で、店の空気に違和感を感じます。

なんとか尻尾を掴むまで、粘ります。

A

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毎日宿で手紙を綴り、鴉を飛ばす。

深い溜息と共に、机に伏せた。


──── 辛い。

嘘の言葉を囁くのも、手を握られるのも。

それでお金を貰うことも……。

面接の時、もっと強く突っぱねるべきだった。

もう一度深く溜息をついた。


(鬼は、どこに潜んでいるんだろう……？)

普通なら、自分の縄張りに他の鬼が侵入しようものなら、即刻排除しにやってくるものだが。

(─── なぜ出てこないの？)



＊＊＊



それから数日後、閉店後に店長に呼びとめられ、事務室へ案内された。


「Aちゃん、君が来てから夜の客足も増えたし、お店も活気が出てきたよ。本当に頑張ってくれてるね」

「とんでもありません」


ペコペコと頭を下げて否定すると、店長は「そんな謙遜しないで」と微笑んで、本題を切り出した。


「実は、息子がね……、Aちゃんを凄く気に入っちゃって、良かったら会ってやってくれないかな？」

「息子さんが？」

「ああ。いずれはこの店を任せようと思ってるんだけど、なかなか人見知りでね……。いい歳だし、そろそろ落ち着いて欲しいっていう親心もあってさ。一度だけ！会ってやってくれない？」


両手を合わせる店長の纏う空気がざわついている。

落ち着きがない。何か、おかしい。

私は、歓喜にも似た興奮を抑えながら応えた。


「……是非」

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