動かされたのは ページ23
(─── 蝶羽織の人だ!)
彼女は笑顔を絶やさずに私のベッドの側まで来ると、手を合わせ喜んだ。
「ようやく目覚めましたね!良かったです。まあ、死にはしないでしょうが、治りが随分と遅かったので心配しました」
「すみませんでした、面倒をお掛けしてしまって……あの、すぐに出ていきます。お世話になりました」
ベッドを抜けて、深くお辞儀をすると扉へ向かうとすると、その人はひらりと目の前に立ち塞がった。
「まあまあ、そう焦らずに!まず自己紹介がまだでしたね。私は蟲柱の胡蝶しのぶといいます。よろくしくお願いしますね、Aさん」
「あの……、なぜ私を?」
懐っこい笑顔を向けられて戸惑いながら訊ねると、しのぶは私をベッドに腰掛けるよう、そっと押し戻した。
その手つきが自然で、無抵抗でストンと腰を下ろす。
「あの後、あなたは日陰に連れ戻されました。本当にギリギリだったんですよ。ほんの少しでも遅れていたら手遅れでした。まさかあそこまでするなんて……もう、度肝を抜かれました!」
「ありがとうございます……助けて頂いたうえに、部屋やベッドまで……」
「いいえ、違いますよ」
しのぶは胸の前で両手を振った。
「Aさんを助けたのは、宇髄さんです」
「……え?」
「音柱の宇髄天元さん。彼が私よりも早く動いて、あなたを助け出しました」
すぐには信じられなくて動揺した。
(本当に?柱の人が助けてくれたの?でも、お館様の命令とか……?)
そんな私にしのぶさんが微笑みかける。
「あらあら、まさかお館様の言いつけで…なんて思ってます?」
図星をつかれて驚きながら目を向けると「ふふふ」と綺麗に笑った。
「それは違います。お館様は何も命じていません」
ずいっと顔を近づけて讃えるような口調で続けた。
「あなたは勝ち取ったんですよ。少なくとも二名の心を動かしました。宇髄さんと、私の…」
しのぶさんは胸に手を当て微笑んだ。
嬉しいからなのか、その笑顔に安堵したせいなのかはわからないが、途端に視界が揺らいで、頬に温もりが流れ落ちた。
「いえ……私、あなたに助けられたんです」
『不可能を可能に出来ないようじゃ、人の心は動かせませんよ』
あの言葉が私を奮い立たせた。
「あの時、言ってくれたから……だから、踏ん張れたんです。……あの言葉が、なかったら……何も出来なかった…何も………」
途切れ途切れに言葉を繋ぐ私を、
しのぶさんはじっと見つめていた。
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時