人を喰わない鬼 ページ3
「……目が覚めたようですね、良かった」
……え?
眠っていたのか?私が?
優しそうな女の人に微笑まれて、ぼんやりとそんなことを思った。
働かない頭で、その女の人を見つめていたが、ハッとなって起き上がる。
「安心してください。あの男──鬼舞辻はもう、あなたを監視することは出来ない」
「──── え?」
穏やかに話す女性の目は、全て知っていることを物語っていた。
「私は珠世と申します。その子は愈史郎。仲良くしてやって下さいね」
「…… Aです」
愈史郎と呼ばれた青年に目を向けると、もの凄い形相で睨まれた。
(───無理だ)
気付いてないのか、慣れているのか、珠世は気にせず続けた。
「私たちも、あなたと同じ鬼であり、鬼舞辻を抹殺したいと思っています」
「鬼舞辻………」
燃えるような怒りがわき上がる。
私の大切なものを、二度も壊し奪った男。
「私たちは、人間を襲ったりはしません」
「なら、どうやって……」
「輸血と称して血を買っています。少量飲めば、生きられます」
「なるほど……」
そんな手があったのか、と関心していると、自分の空腹感が消えていることに気がついた。
お腹に手を当てる。
なんだか違和感を感じた。
「ごめんなさい。勝手に、あなたの体を弄らせて頂きました。鬼舞辻の血の呪いを外す為です。必ずあなたを取り戻しに来るでしょうから、急を要しました。……勝手な判断を、許してください」
「……そんなこと、できるんですか?」
鬼舞辻の呪いを自力で解くなんて。
体をいじられる事よりも、そっちの方が気になった。
珠世は頷く。
「私は医者です。鬼を人間に戻す治療法を確立する為、研究しています」
「………そうですか」
不思議と、興味は湧かなかった。
あれだけ人に強く憧れていたのに…。
珠世が、不思議そうに首を傾げた。
「人に、戻りたくはないのですか?」
「戻りたかったです。以前は。けれど今は……どうでもいい」
「この醜女!珠世様の気遣いを無下に──!!」
「愈史郎」
急に食ってかかってきた愈史郎を珠世が制した。
私は愈史郎を無視する。
「人に戻ったら、私はただの非力な女になる。それこそ鬼舞辻を殺す目的から離れるだけ。まだ鬼でいた方が、マシというものです」
「Aさん、あなた……」
正論を述べたつもりだが、珠世は憐れんだような目を向けた。
「鬼舞辻、あの男を殺す為なら何だってします」
その瞳は憎しみだけを映していた。
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時