裏切らない証明 ページ20
平然を取り繕う。それが今出来る、最大の抵抗。
(……このくらい、耐えられる………)
あの時の痛みに比べたら、痛くない。
…少しも。
刺しても血を垂らしても、座ったまま動かない私に、不死川はより苛立っているようだ。
「……どうしたのかな?」
「不死川様が五度刺しましたが、A様はピクリとも動きませんでした」
「では、Aが人を襲わないことの証明は出来たね」
こんな状況下でも、産屋敷の穏やかな口調は崩れない。
しかしそれでも納得のいかない不死川は反論した。
「お言葉ですが、だからといって裏切らない証明にはなりません」
「そうだ。呼吸を教える義理もない。誰かがその鬼を監視するのも手間だ。鎖にでも繋いでおけばよかろう」
ダラダラと流れ畳に染み込んでいく血を睨みながら考える。
裏切らない証明というのは、まだ起こってもいない未来の事を証明しろということ。
過去の証明ならば可能だが、未来というのは、何においても確かではない。
つまりどうやっても、それを示すのは不可能な事なのだ。
「………私は、裏切らない」
「その台詞は既に聞いたぞアホが。これから先裏切らない事を口先だけでなくド派手に証明してみせろ」
でも───、だけどそれしか言えないのだ。
状況打破の糸口を懸命に探す。
どんどん追い詰められていく。
「鬼のお嬢さん────、」
柔らかいのに、やけに凛とした声が響く。
蝶羽織の女柱が口に弧を描きながら、その艶のある唇を動かした。
「不可能を可能に出来ないようじゃ、人の心は動かせませんよ」
思わず目を見開いた。
(………そうだ。その通りだ)
自分の考えが甘かった。
なんでもいい、証明しなければ!
それで信じてもらえなくても、信じてもらえるまで何度だって……!
私は不死川を見上げた。
目が合うと、もの凄く嫌悪を向けられたが、毅然とした態度を返して、
そして言い放った。
「勘違いしないでください。貴方には頼んでいませんので」
不死川は、震え出した。
瞳孔の開いた目をより大きく見開いて、燃え上がるような怒りに震えている。
その形相は、大の大人でも見ただけで震え上がる程の凄味がある。
蝶羽織の柱は俯いていて顔が見えない。
でもよく見ると、何人か小刻みに震えていた。
「……っざ…なよ………」
額に手を当て天を仰いだ。
そして顔をゆるりと下ろし、威圧を降り注ぐ。
「……分かったァ……っんなに言うなら教えてやるよォ………」
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maicoo(プロフ) - はなさん» ご指摘ありがとうございます!本当にすみません!誤字があると、フッとこう、現実に戻されますよね ; 気をつけなきゃ…(--;)こんな文章ですが、読んで下さってありがとうございます!更新頑張りますね!コメントありがとうー!! (2019年9月23日 3時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!誤字なのですが、鬼血術ではなく、血鬼術だと思います...。これからも更新頑張ってください!応援しています!!! (2019年9月23日 1時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - カナリアさん» ですねw怒らせたら面倒な男上位に入ると私は思っていますwww続き楽しみにしていて下さい!コメントありがとうございます!!頑張ります! (2019年9月21日 14時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 善逸お怒りですねぇwww続きすっごい気になる!更新楽しみにしてます! (2019年9月21日 11時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - モブさん» コメントありがとうございますー!!!!何だろ、二人を地獄に突き落とすのが好きみたいでこんなことに……wwもう、努力してもらうしかないですねw自分が言うなって感じですがw本当にコメント嬉しいです!頑張りますね!これからもよろしくお願いします!!!! (2019年9月19日 0時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:maicoo | 作成日時:2019年9月12日 14時