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エリス嬢は中原と遊ばせておき、首領室で桃華と二人で話す準備は出来ていた。

森は緊張でただ立っている桃華を座らせ話し始める。

頷いたり、時々真顔で、真剣に聞いている桃華。

「残念ながら君の病気は、治療法や死亡率がちっとも分からないんだ。何しろ前例が少ない。うーん、近くに同じ病気の人は居ない。芥川君…、は当てはまらないし」

考えるのを辞めた首領は、病気の説明を桃華に理解させることより、話の最後までとっておいたもう一つの話をする事にした。

森にとっては生け捕りにし、拷問後の涙を流す敵の殺害、エリス孃にとってはショートケーキの苺、といったところだ。

「君に後一つだけ伝えたい事が有るんだ」

用済みだと言われない事だけを桃華は願っていた。

「君の寿命は短く無いと思うのだ。何故なら、君は私が死なせないからだ」

エリスちゃんのお友達を死なせる訳にはいかない、君は面白い子だから、と根拠の無い事を森は言い、桃華には少しの緊張がある。

「有り難う御座います。あの、御用件は、何ですか?」

「嗚呼、話が早くて助かるよ」

桃華は椅子から立ち上がり、先程よりも随分と真剣に首領の手元を見ていた。

次の仕事の作戦が伝えられたらのだ。

「さあ、話は終わりだ、桃華ちゃん。遅くなったが、君に入社祝いが有るのだ」

「有り難う御座います。大事にします」

家へ帰った桃華を見て、エリス孃は思わず叫んだ。

「きゃー、どうしちゃったのよ桃華!」

「首領さんが下さいました」

桃華が抱えるようにして持っていたのは、黒い鉢に入った作り物の植物だ。

手の五本の指をきちんと揃えたくらいの太さの枝が、一本だけ伸びている以外の特徴は見当たらない。

ただ一本の太い枝が一メートル以上の長さに伸びているのだ。下には作り物の赤色の土が敷いてある。

「リンタロウっ!何よ、この変な植物!」

電話を掛けエリス孃は怒鳴った。

「私が桃華ちゃんの入社祝いに部下に造らせたんだ。可愛いだろう」

「どこが可愛いのよ!?」

「シンプルな一本の枝と赤く光る土の組み合わせは素敵じゃないか」

森はふざけている訳ではないのだが、小さなお嬢様が地団駄を踏むくらいには悪いことをしたのだ。

「リンタロウの阿呆おおーーー!」



「僕は充分だと思います。桃華殿は檸檬型爆弾に興味が有る!首領だって、あの子を『マフィアの一員』と仰ったでは有りませんか」

今更ながら、森は梶井に相談をしていた。

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作者名:とおゆち x他1人 | 作成日時:2023年4月22日 22時

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