【中島敦】愛しい君の過去へ【文スト】

弐〜また夢を見る〜 ページ3

…ここは、何処だろう。

周りを見渡しても、ボロボロな壁、天井、床。


…とにかく汚い。




…さっきまで私は商店街にいたのになぁ。


こんな急に見る夢は、まぁ、よくある。


…と云うことは、これも夢か。


はぁ、とまた溜め息をつく。

これ、どう頑張っても夢が覚めることはない。

覚めるとしたら、それは、気付いたら夢から覚めていたと云う例しかないので、

この世界でとりあえず過ごしてないといけないのだ。



「…めんど」


下を見れば、自然と自分の服装が見えてくる。

…こちらも、家に負けておらずボロボロで、いい勝負だ。



…というか私背ちっちゃ！！



「…もー、なんなのここ。意味わかんない！！」




ぷんすか。


イライラしてると、何処からかすすり泣く声が聞こえてくる。



え、こわ。


ゾッとするぐらい響いてきているが、気になるものは気になる。


耳を済ませて、声を辿り歩いていけば、どうやら直ぐ近くにあった扉の奥。

部屋があるのだろう、そこから聞こえてくる。


誰だろう？声からして子供だ。


私は、そーっ…と扉を開ける。

わずかな隙間から部屋を覗けば、其処には見覚えのある男の子がいた。






？「ひうっ…ぅぅ……い、たぃっ…ぃっ…っ…」






白い髪。

前髪は真ん中からだんだんと長くなっていっていくという変な形をしている。



目は手で隠されて見えないが、瞳の色はきっと…



黄色と紫の、グラデーションがかかった瞳が見えるだろう。









…そう、其処にいたのは、先程ぶつかってきた少年の幼少時代の姿であった。

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