お菓子作りは計量が命 ページ17
神楽ちゃんは友達と遊びに行く予定だったらしく、荷物だけ先に運んでもらって途中で別れた。
大丈夫なのかな、狙われてるとか言ってたけど。何もできなかった私が言える立場じゃないか、と自嘲しながら階段を登る。
「ただいま戻りました」
扉を開けばぱたぱたと尻尾を振りながら鎮座する定春くんが出迎えてくれた。かわいい。
くんくんと匂いを嗅がれ、ひとしきりぺろぺろと舐められる。ちょっとくすぐったい。荷物をくわえて居間の方へと向かっていく定春くん。
私も続いて居間へ向かうと、ジャンプを顔にのせたままお昼寝中の銀さんが。自由だなぁ…。私のために部屋のスペースを作ってくれた痕跡が目に入って頬が綻ぶ。
「ありがとうございます」
表情は隠れていて見えないから聞こえてるのかはわからないが、荷物を片したらお礼にパウンドケーキでも作ってあげよう。
・
ケーキがオーブンで焼き上がるのを待ちながら定春くんにもたれつつ、仕事に取りかかる。営業成績表を書き起こしていたら、むくりと起き上がった銀さん。
「ん…すっげー甘い匂いする」
「そろそろおやつの時間ですし…、パウンドケーキを焼いてみました」
甘いものは好きなのだろうか、と不安がよぎるが、糖分と書かれた上の額縁を見てなんとなく安心。紅茶をいれてもらってのんびりと午後を過ごす。
「うっま!幸せだわー」
「ふふ、そういってもらえると作り甲斐があります」
「そーいや、神楽と二人で大丈夫だった?」
「…神楽ちゃんが攫われかけてしまって…結局は神楽ちゃんがなんとかしてくれてその場は収まったんですけど。私は何もできなかったんです、本当にごめんなさい」
自分の非力さと不甲斐なさに悔しさを感じ、ぽろぽろと涙が…、あれ、私泣いてる…?
「もー、Aちゃんは悪くないんだから、そんな気負わなくていーの。背負い込み過ぎたら疲れちゃうぞー」
肩の力抜いて生きてこーぜ、と銀さんらしく慰められる。銀さんの優しさと言葉に甘えて、一人で静かに泣いたお昼過ぎ。
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作者名:ぴ! | 作者ホームページ:https://twitter.com/pipipi__dream
作成日時:2018年9月4日 0時