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冷side


…あの時、僕が彼の子を殺せていたら、何かが変わっていたのかな…。

可愛い娘だった。彼女と同じ紫の髪を持つ…そして鬼の角を持つ娘だった。

今でも鮮明に覚えている。彼女…桜羽と過ごした日々を。
__________________________________________

彼女と其の母は見える者だった。其れがせめてもの救いだったのかも知れない。

…初めて出会ったのは彼女が未だ赤ん坊の時。彼女の両親が、鬼の角を持つ我が子を如何するべきか僕に聞こうとしたのが始まりだった。彼女の母、未羽が彼女の子孫であり、桜羽が其れを濃く受け継いでしまったのだ。其の頃僕は人の為に何かをするのが嫌で、どうせ神社のある山から出られないのならと社の中に閉じこもっていた。

未「鬼神様…どうかお恵みを!!この娘に貴方様の加護を!!」

久しぶりに感じた同族の血。僕が人々から記憶を消し、もう存在しない筈の同胞の気配。其れが少し気になって、僕は彼女の前に姿を現した。

「…此れは…あゝ、彼女が人と番うとは…。…其方の名は…名は何という。」

彼女の母もまた、美しい青の髪と紫の瞳を持っていた。

未「未羽と、申します。この娘は桜羽と。」

みう、おうは。そう、静かに呟く。

「彼女に似て可愛らしいな、特に桜羽は。…髪の色がそっくりだ。」

先祖返り、というのだろうか。人と鬼が交わり、其れだけで済んだ事が奇跡なのだが…。

「人の子は異物を恐れる。未羽、桜羽に頭巾を。決して、一度たりとも外してはならん。」

そう言って、僕は袖を破いて作った頭巾を未羽に渡した。


それから未羽が神社に来る事は終ぞ無かったが。

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作者名:マツリ | 作成日時:2019年3月24日 23時

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