第9話 ページ11
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貴｢では。｣
会議室に着くまでに資料説明を終えると、いつものように去ろうとする。
俺はやつの手を掴んだ。
貴｢えっ？
……ど…うしましたか？｣
困惑したような表情。
リ｢今日話がある。
夜、食堂に来い。｣
貴｢…はい。
承知しました。｣
返事を聞けたため、手を放した。
するとなぜか
そいつは力が抜けたように床に座りこんでしまう。
リ｢おい、どうしたお前。｣
貴｢………あ、いえ。
なんでもないです。
さぁ会議に行ってください。｣
足を擦ってうつむき、そう呟くように言った。
その姿にイラッとして、先程より威圧的に訊いた。
リ｢おい、どうした。
さっさと答えろ。｣
貴｢いえあの……
本当になんでもないんです。｣
リ｢そんなことは聞いていない！
答えろ！
こっちを向けっ？！｣
嫌気がさし、
顎を掴んで顔を上に向けさせれば
悔しげな表情と少し潤んだ瞳でこう言った。
貴｢筋肉痛です！｣
リ｢は？｣
貴｢昨日の訓練が久しぶりで疲れてしまいました。
それに、気付かれてしまえば班から外されてしまうと思っていいませんでした。
申し訳ありません。
追い付いてみせるので、外さないでいただきたい。｣
リ｢………外すわけねぇだろ。
お前は考えすぎだ。
それに追い付くのは当たり前のことだろ。
せいぜい来週の壁外調査までに後輩達を越すんだな。｣
貴｢……。
はいっ！｣
その返事は
いつもより少しだけ明るい声だった。
俺の補佐は、無表情ではあっても
自らの無力さに悔しさを感じ
涙を浮かばせるような感情があることを知った。
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作者名：アラン | 作成日時：2016年12月17日 18時
