捌拾捌(はちじゅうはち) ページ40
《撃ち方始め！！》
「撃てー！！」
グルッペンの声に続くように大先生が叫ぶ。
それを聞いた兵士が大砲に火をつけると、数秒の後に凄い音を立てながら爆弾よりも小さめのソレが発射された。
空を切り、弧を描きながら敵の基地目掛けて落ちて行って……
そして物凄くピカッ、と光った。
「おお〜〜た〜まや〜！」
「いやアレ花火どころか雷や！！分かってたけどやべぇなアレ……」
「どうだいクラレ特性閃光弾は！
まぁ5、6秒全感覚を麻痺させる普通の閃光弾の約20倍の威力だからねぇ。
音も極まって拷問特化の強靭な人間でもない限りは気絶しても死んでもおかしくないからねぇ。
範囲は極小なのがちょっと傷だけど。」
「……この人うちの管下でほんまに良かった……」
首都のど真ん中、なおかつ民衆の家々がすぐ近くにあるこの敵基地は、下手に爆破するとなると周辺の一般市民が多大に巻き込まれる可能性が高く、かなりの高リスク＿それが敵の狙いでもあるのだが＿であった。
それを裏目に取り、今まで範囲が小さすぎるために使用されなかったクラレ特性(音響)閃光弾(グレート)がグルッペンの目に止まったのだ。
大先生は煙草に火をつけると、通信機から聞こえてくるグルッペンの興奮した声と、シャオロンやコネシマの楽しそうな突破報告に耳を傾けた。
「いいのですか？彼と一緒に行かなくて。」
心配そうな目でミシェルがこちらを見つめる。
『彼の為にも、私がここで戦わなくてはならない…
……そんな気が、するのです。自分勝手ですが。』
そう言うと彼は少し笑った。
「貴女が自分勝手なのはいつもですよ。」
余計なお世話だ、否定はしないが。
私は息をつくと、兵士に指揮を出す彼を静かに見つめた。
『……それはそうと、貴方が前線に来たのは感心しません。
国王がこんな所で死んだらどうするのですか。』
「先の戦争で優秀な指揮官は殆どいなくなりましたので、一番指揮が取れるのは私ですから。」
つい最近聞いたようなセリフに眉を顰める。
完全なるデジャヴである。何故だ。
「…それに。」
付け足したような接続詞に彼を見やると、ちょっと大人びた微笑みを見せた。
「貴女が仲間を裏切ることは出来ない、と言ったように、
僕も、
…それだけです。」
感謝しています、グルッペン総統には。
そう言った彼に、私もです。と告げた。
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