【続】あいしてください【zm】 (ページ36)

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捌拾肆(はちじゅうし) ページ36

「A！無理せぇへんで下がれ！！」
『止血したから問題ない！！』
「何が問題ないや！！！」

自分でも驚く程荒々しい声が出る。
しかしまぁしょうがない。彼女から血が溢れたのを見た時、心臓が飛び出る思いだったのだから。
一方の名前は俺の言葉を気にする様子もなく敵に向き合っている。
チッ、と舌打ちをすると、周りに敵がいなくなった一瞬をついて彼女の腕を掴んだ。

「A、下がれ。」
『大丈夫。』
「俺が嫌やねん。」
『……ゾム、お願い。』

その言葉にぐらりと意思が揺らぐ。
初めての彼女からのお願いに、いとも容易く俺は腕を掴む力を緩めてしまった。
＿あぁ、俺は彼女に弱すぎる。

俺の手から腕をするりと抜いた彼女はそのまま戦場へと戻って行った。

俺も彼女について行けば良かったのに、それが出来なかったのは、走っていく彼女に、突き放されたような心地がしたからだろう。

冷たい風で急に意識が現在へと戻ってくる。
敵と応戦する彼女は、前から思っていたけど、綺麗な天使が舞っているようだ。

しかし足を強く踏み出したところで、彼女はあることに気づいた。

＿＿＿前方、狙いを定めた狙撃兵が彼女を狙ってトリガーに指を添えていた。

敵に攻撃を仕掛けた矢先である。
怪我もしているのだ、体をひねろうにも、避けられるはずが、ない。

珍しくその顔は歪み、綺麗な瞳は諦めを映して濁った。

＿＿＿かみさま、お願い。
おれのことは許さなくてもいい、だから。

彼女が目前にいた敵を切り裂く。

発砲音が、やけにうるさく響いた。

＿＿＿Aのことは、連れていかないで。

俺は彼女を力いっぱい抱き締めた。