第十七話 ページ17
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窓際の席に座りながら、外へと視線を向ける。窓の外に映る青空は春よりも一段と青かった。雲がないせいかより深く色が見えた。
「A〜ちゃん！ わっ！」
「うわぁ!?」
声を掛けられた事に、驚きと声が出た。隣を向けば、クラスメイトである女性がニコニコしながら両手の指を楽しそうにワキワキさせていた。
「ごめん、ごめん。まさか、そんなに驚くなんて」
「…いいえ、だいじょぶですよ」
ちょっとだけ、先程の声かけで心臓がびっくりしてしまった。少しだけ鼓動が早くなるのを感じた。
「Aちゃんは、番の人と仲が良いんだね」
「…そうですかね」
「そうじゃなきゃ、昼休みの時間に毎日通い詰めたりしないでしょ？」
毎日、腕章を着け共同スペースへと彼女は向かっていく。そんな彼女の謙虚な姿勢に先生は、腕章を貸し与えるのではなく、腕章を差し上げる事を選んだ。
「言葉は口にしなよ。小さい声でも良いからドドーンと言っちゃいなよ！」
人差し指をさしながら、元気良く答える姿に力強い圧を感じた。腕章を付けている右腕を、左手で強く鷲塚む。
蝉は変わらず、木に張り付きながら鳴いている。求婚に答えてくれる相手は居るのだろうか。
一階まで降りて、廊下を突っ切って行く。扉を開いて室内へと入る。既に何人かの生徒が部屋へと集まっていた。
右、左と視線を当てるが探している人は居なかった。二階に顔を向けると、目当ての人物が手すりに腕を置きながら、此方に手を振っていた。二階へ上がると、エントランスホールを眺められる場所に彼は居た。
「やぁ、A嬢。そんな急ぎで俺に会いたかったか？」
手をひらひらとさせながら、楽しげに笑う彼に先程の彼女の言葉が頭を過ぎる。
「…あ、会いたかったです」
視線を逸らし、最後は言葉が小さくなってしまったが、きちんと口に出すという事は出来た。足元に一回りほど大きい靴が見える。顔を上げると彼が居た。
「奇遇だな。俺も、A嬢に会いたかった」
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作者名：無地 | 作成日時：2023年10月31日 10時
