DESTINY《旭那由多》 (ページ9)

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9．真剣な眼差しページ9

次の日

今日は一段と暑く、夏並みに気温が上がったので、夏の格好をして登校した。

髪の毛もいつも下ろしていたのをポニーテールにして上げている。

6月でこの暑さは、この先が思いやられるな…

3限の時間になった。
旭くんと待ち合わせの図書館に向かうと

｢あ、いた！旭くんお待たせ！｣

一足先に旭くんが資料とパソコンを広げて作業している。

その姿は、人気バンドのボーカルとは思えないような、真面目な大学生の様子であった。

彼がこちらに気づくと一瞬驚いたような顔をしたが、すぐ資料に目をやる。

私たちは着実に準備を進めていった。

早くプレゼン終わってほしいと思う一方、旭くんと一緒にプレゼン準備する時間がなくなると考えると、どこか寂しい気持ちになる。

『うーん、結構進んだけど、発表したいことが増えてまとまらないなぁ』

那｢そしたら、こことここを削って、これを少し深めれば、まとまるんじゃねぇか｣

こうやってたくさんアドバイスをくれる旭くん。

最初は取っ付き難くて苦手意識あったのに、いつの間にか彼の優しい所に心惹かれている自分がいた。

『GYROAXIA、北海道ツアー決まったんだってね、おめでとう』

那｢え…？あぁ｣

『本当にすごいよ、旭くん。

私この前初めてGYROAXIAの曲聴いて、感動した。

悔しさもあるけど…』

那｢…はぁ？悔しさ…？｣

『私も音楽やる人間だから、旭くんの才能に嫉妬しちゃった』

旭くんは黙って私のことを見つめていた。

那｢もしかして曲書くのか？｣

『え…まぁ…趣味程度だけどね？』

那｢聴かせろ｣

『えっ』

まさかの言葉。

私が旭くんに聴かせる曲なんてない。

どうせ低評価付くだろうし。

『旭くんに聞かせられる曲なんて無いよ。

旭くんみたいに才能ないし』

那｢才能とか関係なく、あんたが作った曲を聴きたいんだ｣

旭くんは真剣な眼差しでこちらを見る。

その眼力に負け、しぶしぶ音源を聴かせる。

緊張しすぎて俯くことしかできなかった。