16．偶然 ページ17
いつものように大学に通う毎日。
心のどこかでは旭くんのことを考えていた。
どこかに旭くんいないかな、なんて辺りを見回してしまうこともある。
美波｢また旭那由多探し？
連絡先知ってるんだから連絡すればいいのに｣
『でも…特に用ないし迷惑だよ…』
美波｢まぁ、毎週英語の授業で会えるからいい方だと思うよ。
まぁ人に好かれるタイプじゃなさそうだし、誰かに取られちゃうなんてことはないかもしれないけどね〜｣
『なにそれ、失礼じゃん。』
美波｢冗談冗談。今日帰りにパフェ食べてこうよ。お腹空いた〜｣
美波はいつもいい意味で呑気だよな。
教室棟を出て、教授のところに提出物を届けに行こうとすると、何やら近くが騒がしい。
｢あれジャイロのドラムの人だ｣
｢深幸くんだ！かっこいい！｣
｢写真撮ろ！｣
｢サインください！｣
ジャイロ…
あ…GYROAXIAのドラムの人だ
すごい人気だ…
この人ファンサがすごい。
旭くんとは大違いだ。
美波｢あの人もGYROAXIAなのか…すごい人気だね…｣
『うん。行こ…
あっ』
その人のことは後にして、提出物届けに行こうと向きを変えたところ…
ドンッ
人とぶつかり、手に持っていた楽譜を落としてしまった。
『すみません！』
｢いえ、こちらこそすみません。
…これ…落としましたよ｣
『あ、ありがとうございます！』
｢君、音楽やるんですね｣
『え、まぁ、はい』
顔を上げるとどこかで見たことある人だった。
するとそこへ会いたかった人の声が聞こえてきた。
那｢おい美園、ここで何してるんだ。
今日は練習早めに始めるからもう行くぞ｣
礼｢あ、那由多、ごめん。
この子とぶつかっちゃって…｣
那｢あ？
………あ…水瀬｣
私も軽く会釈する。
こう旭くんを目の前にするとなんだか恥ずかしい。
礼｢え、知り合いなの？｣
那｢ま、まぁ…｣
旭くんの頬がほんのり赤くなっているのを見逃さなかった。
それを見て私も顔が熱くなるのを感じた。
礼｢あ、もしかして…あの曲の…｣
那｢美園、もう行くぞ｣
礼｢あ、あぁ｣
今の時間はなんだったのだろう。
美波｢いやー、すごかった。私は蚊帳の外だったけど｣
心臓の高鳴りが収まらない。
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作成日時：2020年5月25日 23時
