ヘンズツウ【菊地原士郎】

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「先生いないとか………暇なくせに」


保健室のドアは開けっ放し
挙げ句の果てに先生はいない。
多分先程の騒ぎの対応に追われているのだろう。ここは玄関が近いから。


『………』

いつもなら、まあいいじゃん とか
言いそうなAはなにも言わない


「手洗いなよ。ここお湯出るから」

言われた通りにお湯で血を洗い流す

「結構深く切ってるね。なんであんな馬鹿なことしたの？お前らしくもない……」

慣れたようにガーゼを当てる菊地原。
人に触れたりしなさそうだが
今は普通に嫌がることもなくAの手に触れていた


「……ねえ聞いてる？」

手当が終わりAの方を見る

「A？」


彼女は泣いていた。


声もあげることなく目から流れおちる涙


「！………」


______カチャ



何を思ったのか菊地原は保健室の鍵を閉める


「大丈夫？」


彼とは思えないような優しい声。

菊地原も事の重大さをわかっていた。
明らかに挨拶を交わした時
機嫌も悪かったし なにより最近
体調の悪い彼女。そして初めて見た泣き顔。


『………っ…』


なんでもそつなくこなすイメージが
仇になった



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