検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:9,198 hit

ぼくのたからもの ページ28

静かな研究室に、ぱらりと紙の捲れる音が響く。
何もすることの無い休息の日。
雑誌の文字を目で追っていると、突然肩に誰かの手が乗せられた。


「モトジロウ……何読んでるの……?」


僕の助手であるメアリーが、僕の方を見ていた。


「『Newton』って云う科学雑誌、読んでたんだ。メアリーには未だ早いかもね」


「ふーん……」


彼女の視線が雑誌の上に落ちた。
嗚呼、一挙一動が愛くるしい。


「……科学者って、大変そう……」


「何でそう思うの?」


「だって……周期表とか、ややこしい用語とか丸暗記しなきゃいけない……」


「意外とそうでもないんだな、それが。こういう文明の利器を活用すれば何とかなる」


「おお……すまーとなふぉん……」


澄んだ青い瞳が此方に向けられる。
直視するのさえ躊躇われる程に美麗な、美の女神アプロディーテの寵愛を一身に受けたかのような姿。


「きゃっ……モトジロウ……!?」


気が付くと僕は、メアリーの事を抱きしめていた。


「……可愛いよ、メアリー」


「そんなこと……ない……」


「確かに、美的感覚は個人差が大きいからねぇ。でも、僕は君が可愛くて仕方ないと思ってるんだよ」


「……恥ずかしい……」


「嗚呼、その顔も良いね」



そっと彼女の体を離し、顔が向き合うようにしてやる。
今、メアリーの瞳には、一体どんな僕が映っているのだろう?


メアリーの後頭部に手をまわし、僕らの顔を近づける。


「……!」


唇が触れ合う感触がする。


「……ちゅー、しちゃった……」


顔を真っ赤に染めたメアリー。
ああもう、そんな顔をしないでよ。

君の事を滅茶苦茶にしてしまいたくなるじゃないか。

そんな衝動をぐっと堪え、メアリーの体から手を離す。


「……びっくり、した?」


「した……」


それ以上の事をしてしまいたい。
でも、そんな事をしてしまったら――


「さ、今日のご飯は何が善いかい?最近、カロリーバーばっかり食べてたし……今日は、メアリーの好きなものにするよ」


「え……いいの……?」


話の逸らし方が少々強引だった様な気もするが、メアリーが気に留めた様子もないので、良しとしよう。

嗚呼、僕のメアリー、愛しいメアリー。
これ以上彼女を穢してしまうなんて、出来ない。


「ずっと、僕の大好きなメアリーでいてね」


僕の呟きは、研究室の静寂の中に消えた。

はっぴー、はろうぃーん?→←カクテルを君に。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.0/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

13 - メアリーさん(ちゃん?)可愛いです。きゅうーんてするです。かじーさん羨ましいのです。 (2016年10月22日 13時) (レス) id: 47ed984e80 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:キューブ | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年9月16日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。