27錠目:『能あるオリオンは爪を磨く』 ページ26
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俺の調子を狂わす原因がAにあるなんてこと、直接言える訳も無かった。
｢私はね、皆が楽しそうにサッカーしたり笑ったりしてるが好きなの...だから、ね!!｣
｢ﾝむぐっ｣
俺の両頬を優しく包み半ば強制的に目を合わせた。
夜空の星や月明かりが仄かにAの瞳に反射する。
ただ純粋に、綺麗だと思った。
｢笑って、ありがとうって言ってくれれば私はそれだけで充分だよ｣
｢あぁ...ありが、と...｣
｢ん、合格｣
そっと手を離される。
低体温の自身の肌に彼女の温もりが若干残り、名残惜しい様に俺は手の甲を頬に押し付けた。
｢調子はどう? だいぶ良くなってるといいんだけど...｣
｢よ、余裕余裕!! 見ての通り超元気.....ゔっ｣
｢わー、もうッ!! 全然ダメじゃん、足取りふらっふらだし顔色も良くない!!｣
再度座り込み項垂れる俺の背中をAは優しくさすった。
ダメだろ、こんなの、ずるいだろ。実質ゼロ距離だ。
｢10分......いや、5分待てる? 車出すよ、私｣
｢はあッ?! 流石にそれは申し訳無さ過ぎるって!!｣
｢じゃあ終電間近の今、折緒1人で帰れる? また気付いたら見知らぬ場所〜...なんてことあるかもしれないでしょ?｣
｢そ、それは何とかします...頑張って...｣
｢しかもこれ以上外にいたらもっと体温下がっちゃうでしょ、いいの? プロトレーナー折緒が風邪ひいたら困る人が居るでしょ?｣
｢ま、まぁ...ハイ......｣
威勢の無い返事にAは荷物を俺に任せ、本当に車を取りに走って行ってしまった。
｢...結局、大人になれなかったのは私だけなんだね｣
その言葉が、やけに耳に残っている。
＿
3分くらい経っただろうか、俺は変わらず項垂れていた。
胃腸は未だ違和感を抱えたままだったが、漸く水神矢とAの言動や行動に合点がいった。
キスの意味も、言葉の理由も、2人の距離感も。
俺が入る余地などあるのだろうか?
知らない間に2人はより親しく、深い時間を過ごしている。
俺なんて、ただの初恋の延長に過ぎないのではないか。
堂々巡りばかりの思考が限界を迎えており、残っていたドリンクを一気に飲み干す。
｢お待たせ、寒くない?｣
｢...ん、平気｣
Aが目の前にいる時だけ負の感情は掻き消され、心の漣が治まる。
きっとまた1人になった時、あの汚泥の様な感情は再沸騰するだろうが、今はこの距離感が何よりも心地良かった。
深紅のアルファロメオのボンネットに星月の光が反射し、もう1つの夜空を彩っていた。
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28錠目:『睡魔と懐古と角瓶パープル』→←26錠目:『そっか、不可抗力だったわ』
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星猫 - もう一つのｐｃがしました。初めまして！とっても素敵です！高評価しました！ (2021年9月8日 11時) (
レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - ゆりりんさん» わ〜!! 勢いある挨拶ありがとうございます〜^^ ちまちま更新していきますので気長にお待ち頂けると幸いです (2021年2月2日 1時) (レス) id: f96d68692e (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - まず最初に…好き!!（挨拶）続きが読みたくてたまらないです！ (2021年2月1日 20時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 棘水さん» 了解です！また何かあったら声掛けますんで、これからも更新頑張って下さい！！ (2019年4月9日 15時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます!! が、合作イベント....!!大変魅力的で参加したい気持ちは山々なのですが私生活の多忙や内容が合作内容が全く分からず他の皆様にご迷惑をかける可能性しかないので今回は辞退させて頂きたく思います....また機会がありましたら是非....!! (2019年4月8日 22時) (レス) id: c7cb6e701d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：棘水 | 作成日時：2018年7月20日 13時
