56話 ページ15
「‥‥‥ごめんなさい。村上くんが似てるの。私の大切な友達に」
「‥‥‥‥そうなんだ。どんな子なの？」
「優しくて、面白くて、世界一可愛い。私の自慢の友達なんだ」
「すごいね。なんか意外かも！Aさんは、大好きなんだね。その子のことが」
「うん！‥‥‥私なんかと仲良くしてくれて、遊んでくれて、その子のおかげで今まで知らなかったような感情をたくさん知ることが出来たの。だから、謝りたくて」
「‥‥‥‥‥‥え？」
「その子と、最近連絡が取れなくなってしまって。私が何かしてしまったに違いないの。だから一度でも良いから直接会って‥‥‥‥‥いや一言でも話せたらいい。その時に、ごめんねって絶対に謝るって決めてるんだ。向こうは、会いたくないって思ってるかもしれないんだけど」
「そうかな」
小さく、でもはっきりとした声でそう聞こえた。
「その子だって、会いたいと思ってるに決まってるよ。人間関係って鏡だって言うから。Aちゃんに初めて知った感情があるように、その子にだってそういう想いが、あるはずなんだよ。だから、Aちゃんがそんなに責任を感じる必要はない。と俺は思う。嫌われるなんて‥‥‥絶対あるわけないから」
肩を震わせ頬は紅潮させて村上くんはそう言い切った。
本人でもないのに。舞子ちゃんのことを知ってるわけでもないのに。その言葉で涙が出てしまいそうなほど安心してしまった。
‥‥‥怖かったんだ。舞子ちゃんのことを友達、と呼ぶ自信がどんどん自分の中で無くなっていくのが。
「あの、名前」
「え？‥‥‥‥あ！！！！！」
ごめん！！！！！全力で謝って直角に頭を下げてきた村上くん。でも名前で呼ばれることが妙にしっくりきて、これは舞子ちゃんの影響なのかもしれない。
「いや、別に良いよ」
「え、名前で呼んでも良いの？」
「‥‥‥みんなの前では、辞めて欲しいけど」
「‥‥‥‥！じゃあ、みんながいないところなら、良いんだ？」
「‥‥‥‥‥うん」
「ありがとう！！」
とても嬉しそうに村上くんが笑った。
でも私だって嬉しかったからお返しをしたい気持ちだった。舞子ちゃんではないけど、まるで自分のことのように全力で返してくれた村上くんの気持ちに対して。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
