55話 ページ14
「はい。じゃあ隣の人と向かい合ってください。授業の終わり‥‥10分前になったら声かけま〜す」
4限は選択授業で美術の時間。
今日の課題はデッサンだ。隣の人と向かい合ってお互いの似顔絵を描くという内容のもの。
私の相手は村上くん。たまたま同じ授業を取っていたようで、これは良いチャンスだと思った。
真剣にデッサンをしている村上くんの顔を私もイーゼルに描き出していく。
傷ひとつない陶器のような肌
高く通った鼻筋
ぱっちりとした二重
密度の濃いまつ毛
透き通るような瞳
ふっくらとした唇
「‥‥‥やっぱり似てる」
思わずそう声に出てしまうくらい、村上くんと舞子ちゃんは瓜二つだった。
「はい！じゃあ10分前になったので片付けてください」
あっという間に時間は流れ、授業終了の10分前を告げる。
最後はお互いに見せ合って終わり、というなんともあっさりしたものだ。
「うぅ、ごめんAさん。俺絵マジで苦手で‥‥‥」
そう言って見せられたのはピカソもびっくりの何というか、前衛的な‥‥‥。
何のコメントもできない私に対して村上くんが私のイーゼルを覗いてきた。
「Aさんは‥‥‥うまっ！！！！！」
村上くんがオーバーなリアクションを取って目はこぼれ落ちそうなくらい見開かれている。
「いやいや、全然だよ」
「え？マジで上手いよこれ。どうして美術部入らないの？ってくらい」
「大袈裟だってば‥‥‥美術部の人に聞いたら怒られちゃうから」
「やっぱり字が上手い人って絵も上手なんだねぇ」
村上くんが真剣な目でそう言ってくれるからこれ以上否定するのもな、と思って小さくお礼を言う。
「じゃあ、お疲れ様！」
「村上くん、待って」
片付けた人から順番に教室に帰っていき美術室からは誰もいなくなって、私と村上くんの2人きりの空間になる。
「‥‥‥どうしたの？」
村上くんが不思議そうな顔で私を見た。
私は緊張で滲む手の平を後ろで組んで、話を切り出した。
「あの‥‥‥村上くんって兄弟とか、いる？」
「え‥‥‥お兄ちゃんがいるけど」
「妹さんとかお姉さんとか、いない？」
「‥‥‥うん。いないね」
「じゃあ従姉妹はいる？再従姉妹とかでも！」
「なんでそこまで聞いてくるの？」
まずい、色々と探りすぎちゃった。突然失礼だよね‥‥‥。
でも村上くんは怒ってるわけではなく、ただ私の目をまっすぐに見てそう尋ねてきた。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
