好きな人は遠きにありて愛でるもの…だけど (ページ15)

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SJ side

「・・・フレックス使うのも手か・・・。」
まだ使ったことないけど、いい経験だ。この際試してみるか。

ひと晩振りの家路に着いた僕は、しばらく部屋で放心状態だった。

何とか自分を取り戻し、シャワーと着替えを済ませソファにもたれている。

「自分から会社に顔を出し辛い状況を作っといて・・・。
・・・何であんな事した？Aちゃんを・・・困らせるような・・・。」

今更自分のやった事を後悔しても遅いんだけど。

Aちゃんもせめて・・・
突き飛ばして拒否してくれたらよかったろうにさ・・・。

君は、どうして拒まなかったんだろう・・・？

少しは僕を…僕の事を…

好きなのかな？

『なら、あのままホントに押し倒せば』
嘯(うそぶ)く醜い僕が顔を出した。

醜い僕は・・・嫌いだ。

わがまますぎる。
自由すぎる。
狡猾すぎる。
卑怯すぎる。

僕が我慢していることすべてをやってのける。

そんな僕自身が

僕は嫌いだ。

――スマホが震えた。

着信画面にナムジュンの文字。

SJ「・・・おはよ、ジュナ。」
NJ『よかった！ちゃんと家に帰れたんですね！』
SJ「ああ…うん…。」

・・・Aちゃんちに一泊したなんて言えないな。

SJ「心配かけてごめん。あのさ、今日出勤遅らせる。
ついでに外回りしてくるから、フレックスにするよ。」
NJ『え！ヒョンが？珍しいですね？どんなに深酒しても定時出勤がヒョンのポリシーだったのに。』
SJ「１度やってみたかったんだよ。何事も経験さ。」
NJ『・・・ヒョン・・・昨日はすいませんでした…。』

心配性だよな、ナムジュニは。
SJ「はは・・・気にするなよ。って言っても無理か。ジュナの言ってることも一理あるよ。」
NJ『ヒョン…あの、』
SJ「Aちゃんの事？大丈夫。言ったでしょ？今日から本気出すよ・・・。」

・・・ある意味もう本気出してきちゃったんだけどね。

「外回りしてれば、気分も少しは落ち着くだろ。」

ナムジュンとの電話の後、新しいスーツに着替えながら、午後の外回りのスケジュールをチェックしてたら、

ﾋﾟｺｯ

「ん？ユンギがカトク？」
うわ！珍しい！いつもめんどくさがって使わない奴が・・・。

「・・・は？」

メッセージを確認して、僕のすべてが静止した。

ユンギA、貰いますから、そのつもりで。

「ユンギの馬鹿！！」

気付けば、荷物もろくに取らず会社に向かって走っていた。