好きな人は遠きにありて愛でるもの (ページ50)

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泣き疲れたのか、お酒のせいか、すっかり寝入ってしまった主任。

A「……コレがソファベッドで良かった。」

お母さんが泊まりに来てた時しか活躍しなかったこいつが再び脚光を浴びるなんて！

背もたれを倒してベッドに形を変え、主任をそこに寝かせようとした。

A「うわっと……！」

……抱きついてるから、一緒に倒れこんだ。

すぐ隣には泣き疲れた子供のように、涙の痕でいっぱいになったまま眠る主任の顔。

そっと頬を撫でるとぴくぴくさせて眠り続けている。

A「寝顔も可愛いなぁ……。」

ほっぺをつついてみる。

余計なお肉がついてない、少し細い頬。でも、肌は意外に綺麗。

SJ「ん……。」
頭を揺らし、指から逃げる。

よく見たらネクタイ、そのままだ。

寝てる間に首絞めちゃいそう……。

A「外し方よく知らないけど……確か――」

前回の親睦会でジミンちゃんがネクタイを緩める姿を思い出しながら、どうにかネクタイを引き抜いた。

A「……意外と単純な構造だったんだ。」

スーツと一緒にネクタイをハンガーにかけ、毛布を掛け直してあげると、

SJ「う……ん……」

可愛く声を出し、寝返りを打った。

あんなに辛そうにしてる主任は初めてだ。
それもそうか、辛そうな所なんて見せたことなかったもんね。

『あの思い出は……僕だけのもの、だから。』

A「――主任。」

そんな辛い思い出をどうして一人で抱えたのか、結局話してくれなかったなぁ。

まだ……話せるほど吹っ切れられてないのかな？

もしかしてまだ……その人の事……。

いつかは……話してくれるかな？

A「おやすみなさい……。」

ソクジン主任の髪をそっとひと撫でして、私は部屋の明かりを落として寝室のベッドへ潜り込んだ。