〜運命〜 ２ ページ12
.
「医者にかかったりはしなかったのか？」
「父の事があったし、そこまでの余裕がなくて……」
医学の知識なしにその原因を正確に知り、排除することは難しい。
それでも医者に頼らず、できるだけ金をかけず自分達でどうにか改善しようと、民間療法と呼ばれるものに手を出す者も少なくない。
だが、大抵は気休め程度の効果しかもたらさない。
まあ、『病は気から』なんて言葉もあるくらいだから、それがきっかけで基礎体力が高まって病を克服するきっかけになることはあるだろう。
彼女の場合は、その手の理由で運良く体質に見合ったものが見つかって、大病を免れてるってところだ。
病弱でなければ、上玉になれたかもしれない血の持ち主だったってことか。
いやはやもったいない……。
「今からでも医者に診てもらえばいいだろ？」
「父が遺したこの家を守るのも、私のやることのひとつだから。そっちにもお金は必要なんです」
自分の命より守るものがあるってことか。
短命な人間なら、そう言うことに人生を捧げ、悔いなく天寿を全うするのも悪くはない。
俺らには出来ないことだ。
少し、羨ましいと感じたのは気のせいではないだろう。
「ふーん……。お前にはお前の事情があるんだな」
大変だな。なんて同情の意を見せるような言葉を呟いてカモミールティを飲み干すと、目をぱちぱちするAと目が合った。
「変わった人……」
「何で？」
「他の人は大抵、家より身体の方が大事だってお説教するのに」
「……そもそも俺は『人』じゃねーし」
「ふふっ！そうでした。ヴァンパイア、でしたね」
俺の正体を知っても怯えることなく、普通に接してくれるA。
「お前の方がよっぽど変だと思うけど？」
「そうですか？」
「俺が、怖くないの？」
「全然。ちっとも」
ニコニコと屈託なく笑う。
その言葉に嘘はない。
匂いで判る。『恐怖』の香りなんて微塵も感じない。
寧ろ、甘く濃い香りがさっきよりも強くなって、俺を誘っているようにも感じられる。
自分のテリトリーにいるから安心してるのか？
「じゃ、俺がここでお前の血が欲しいって言ったら？」
「私がヴァンパイアになれるんなら、差し上げます！」
「は？」
期待に目を輝かせて「差し上げます」なんて言った奴、初めてなんだけど？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 524人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - かなこさん» コメントありがとうございます！ドキドキ&しっとりとした雰囲気を暫しお楽しみください♪ (2019年7月3日 7時) (
レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - こんな僕でも…を読み返そうかなと思っていたらまさかのユンギ verの連載が始まっててすぐ読みました(*^^*)こっちのお話もドキドキさせてもらってます(〃ω〃) (2019年7月2日 23時) (レス) id: 9abaeb2ac4 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» コメントありがとうです！あぁっ！心臓大丈夫ですかっ？！男前ユンギさんが描けてるなら、もう作者いうことないです！ (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - たきゆさん» コメントありがとうございます！ ええ、切ねぇです。正直切ねぇです。切ねぇですが！ボチボチゆるっと更新をお待ちいただけたらなぁ、と！ (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - ユンギがぁ〜男前過ぎて、心臓が痛いです！！ (2019年6月25日 21時) (レス) id: 3d660c888b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年6月5日 21時
