〜伴侶〜 2 ページ32
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俺が居ようが居まいが、勝手に飲み食いして大盛り上がりしている従業員たちに、我が秘書様がクリスマスプレゼントと称して某有名百貨店の商品券を配り、皆、口々に俺に謝辞をくれる。
「社長も食べてくださいよ!」
「ああ、食ってる食ってる。……それよりほら、手ぶらとは何だよ!酒とグラス持ってこい!」
「ああっ!申し訳ありません、社長!」
俺に促されて持ってきた酒をグラスになみなみと酌めば、頭を下げて飲み干す数人の若い男性従業員。
そのグラスを片手に、他の奴等の元に千鳥足で向かい、また酒を酌み交わしていた。
「……やっと散ったか」
酔いどれの従業員たちからようやく解放された俺は、誰かが勝手に俺のグラスに酌んだらしい酒に手を伸ばし、これだけ飲み食いして浮かれられるこいつらがちょっと羨ましいと思わなくもないなと、どんちゃん騒ぎを眺めて僅かに頬が緩む。
スッと背後に近づく秘書様の香り。
秘書様は俺の前の料理の減らない皿を見て、軽く溜息を溢した。
「そんなに残して……。召し上がらないんなら無理なさらなくても」
「……少しは食わなきゃ場が白けるだろ?」
ヴァンパイアでも普通の食事をしても構わないが、腹にただ溜まるだけで空腹は紛れない。
水もまた然り。
俺等の空腹や乾きを癒せるのは、人間の生き血以外にはない。
俺の正体を従業員たちは誰一人として知らない。
それを知らない従業員たちからこうして飯や酒を勧められても、軽く口をつける程度で済ませている。
社内で俺の正体を知っているのは我が秘書様ただ一人。
スヨンは俺の“食事”相手の一人だから。
“食事”相手に秘書業務を任せているのは、突発的に吸血したい欲が疼く時の為の言わばブレーキ役。
仕事が立て込み、吸血するタイミングを逃してしまうと、本能が優位に立ち、ちょっとコントロールが危うくなることもあるからだ。
「俺、途中で抜けるから……適当になんかに包んでくれね?」
「……彼女さんのところですか?」
「ん……」
もちろん、スヨンにAと付き合っていることも話した。
最初こそ、「これで遊び呆ける事はなくなった」と喜んでいたものの、それでもまだ何か不満があるのか、Aの話をするとこうして表情を暗くすることが増えた。
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あがしおん(プロフ) - かなこさん» コメントありがとうございます!ドキドキ&しっとりとした雰囲気を暫しお楽しみください♪ (2019年7月3日 7時) (レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - こんな僕でも…を読み返そうかなと思っていたらまさかのユンギ verの連載が始まっててすぐ読みました(*^^*)こっちのお話もドキドキさせてもらってます(〃ω〃) (2019年7月2日 23時) (レス) id: 9abaeb2ac4 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» コメントありがとうです!あぁっ!心臓大丈夫ですかっ?!男前ユンギさんが描けてるなら、もう作者いうことないです! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - たきゆさん» コメントありがとうございます! ええ、切ねぇです。正直切ねぇです。切ねぇですが!ボチボチゆるっと更新をお待ちいただけたらなぁ、と! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - ユンギがぁ〜男前過ぎて、心臓が痛いです!! (2019年6月25日 21時) (レス) id: 3d660c888b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あがしおん | 作成日時:2019年6月5日 21時