1つのデータ ページ22
「どうしよっかな……やっぱりダメ。1つしかない大切なデータだからね」
「えー残念、見てみたかったです」
少し大袈裟に残念がってみた。
とはいえ、見せられないと言われるのは想定内。私の狙いはそこじゃない。
今もし手元にあるんだったら、その証拠映像、ちょっと見せてくれません？──私はたしかにそう言って頼んだ。
それに対する返答に迷ったということは、ゾロの映像が記録されている映像電伝虫はこの家のどこかに保管されているはず。
おまけに、ジョウの目線は一瞬だけベッドの左側へ動いた。
ベッドの左側には引き出しのついた戸棚がある。
その戸棚は、初めて私がここに来て渡した名刺を入れた戸棚だ。
この仕事をある程度続けていてわかったことだけど、たとえ一人暮らしでも、デリ嬢の名刺を人の目につく場所に置く人はほぼいない。
大抵の人は、貴重品だとか大切なものが仕舞ってある場所に名刺を入れる。
つまり、ジョウにとってその戸棚は貴重品入れなのだと思う。
映像電伝虫のありかは戸棚の中でほぼ確定だ。
あとは、映像電伝虫の場所に気づいたことをジョウに悟られないようにしなくてはならない。
変に意識してしまうと目線や表情が不自然になりそうな気がする。
私は、一旦、映像電伝虫のことは忘れ、ジョウを気持ち良くすることにすべてを集中させることにした。
帰り際、ボディーソープの香りがするジョウの頬に手を当てて囁く。
「ねえ、次はいつ呼んでくれますか？」
「そうだね、また明日にでもおいで」
「うれしい！ ありがとうございます。ジョウさん、相変わらず体力おばけですね」
「そりゃ、相手がリボンちゃんじゃなかったらこんな頻度で呼ばないよ？」
ジョウの顔がほころんだ。
照れるふりをしながら、ジョウに抱きつく。
「じゃあ、そんなジョウさんに、次は特別サービスしてあげる」
「本当に？ うれしいなあ」
「明日は、媚 薬を持ってくるから。お店には内緒ですよ？」
「それは刺激的な夜になりそうだね」
ジョウと笑い合う。
笑いながらも心の中では、ふと、何をやってるんだろうなあと冷静になる瞬間がある。
デリ嬢と客──お互いそこに愛はないとわかっていながら、愛があるふりをする。
これを茶番劇と呼ばずになんと言うのだろうか。
でも、ジョウとのこんな茶番も明日で終わり。
照れ笑いの裏で、私はひそかにゾロを救う意志を固めた。
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miku(プロフ) - 桜さん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！最近はなかなか執筆できていないのですが、今でもこうしてコメントをいただけるとまた時間のあるときに書いてみようかなという気になれます😭🫶🏻 (2022年11月14日 17時) (
レス) id: 761cc2fde5 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - とっても、素敵な作品でした。 これからも頑張ってください！ (2022年11月12日 22時) (レス) @page33 id: a028b5c607 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» アニメ全然観てないんですよ、、ワンピ以外のジャンプ作品だったら銀魂と鬼滅くらいです (2021年9月8日 13時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月8日 7時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» 最初のコメントでこんな嬉しいお言葉をいただけるなんて！高評価までありがとうございます！！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku | 作成日時：2021年9月4日 1時
