番外編107話 ページ48
「子供を誘拐？何を言っているんだ。うちの会社は水産物を運ぶ企業だ。言いがかりはやめて頂きたい」
子供たちをさらった証拠はあるのか？
男に問われる。
「井ノ原さん！待ってくれって言ったじゃないか。何一人で乗り込んでいるんだ!!」
外で待っていたはずの井ノ原の姿が無くて慌てて事務所へ駆けつけた。
「証拠は今この人が見て来た」
「俺？」
「車」
「あぁ、車は倉庫で確認した。間違いない。ナンバーも一致した」
「子供たちはどこにいる？」
事務所奥から声がする。
目に映ったのは一瞬だけ見えた小さな足。
引きずれたように見えなくなる。
坂本も見ていたことのだろう。
大きく呼吸する気配。
「俺一般市民だけど大暴れ見逃して」
「どうぞどうぞ。俺は日本の警察じゃないから制限はあるようでない。ご自由に動いちゃってくれ」
合図はなかった。
坂本は男を捉え、井ノ原は事務所の奥に走る。
雅紀たちは給湯室から出られずにいた。
抑えつけられ動けない。
フッと首に触れていた手から力が抜ける。
男が准一の口をもう片方の手で塞ぐのに集中したのだろう。
雅紀を抑えていたもう片方の手の力が少し抜けた瞬間に
男の手を力いっぱいにかみつく。
あまりの激痛に男は准一から手をはなし、雅紀の顔を殴り付けた。
小さな体は出口へ転がる。
「雅紀！」
「騒ぐな！黙っていろ!!」
正気に戻った男はすぐに雅紀を事務所から見えぬ奥へ引きずり移動をした。
「俺の大事な子供らに何してくれてんだ！」
低い声。
男が見上げる。
雅紀と准一を掴んでいた腕が離れた。
井ノ原だ。
男の襟首を掴んだと思えば後ろへ引っ張り出し、思いっきり溝内に膝を打ち当てる。
うなり倒れる男。
「雅紀、准一！」
「いのっちぃ！」
井ノ原の心臓は止るかと思った。
壁際で小さく身を縮めている二人の姿。
雅紀の顔にできた痣。
プツリッと理性が切れた。
男の体を蹴り上げて抱き寄せた二人。
探していた大切な宝。
やっとこの腕に取り戻せた。
安心する背後で再び男のうめき声。
隠し持っていたナイフで井ノ原を襲おうとしていたらしい。
足元に落ちたナイフと無表情な顔で男を殴り続けている坂本の姿があった。
「そいつ生きている？」
「ん？話が出来る程度に生かしている」
坂本は井ノ原の腕の中にいる准一の姿を目にすると怒りが収まる。
「准一」
呼びかけると振り向く小さな顔。
「おいちゃん、おいちゃん！」
飛びついて来た体を抱きしめた。
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むつき(プロフ) - ｒｉｏさん» そうですね、まさちゃんと皆が出会えて本当に良かったです。どんなに傷を抱えていても前を向いて歩んで行けるはず！読んでくれてありがとう！ (2017年7月12日 22時) (
レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はぴともさん» はぴともさん……大好きって告白されちゃった。いや違う違う(笑)兄弟たちを大好きになってくれて感謝です！ (2017年7月12日 22時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - のんさん» お兄ちゃんたちの優しさが弟の愛が雅ちゃんの心を開いたのでしょう。二人ともやっと助け出されましたよ！ (2017年7月12日 22時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - 沙羅さん» まーくんがしゃべりましたよーーー。和ちゃんもご機嫌です。小さくても兄弟たちは共に助け合います！ (2017年7月12日 22時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
ｒｉｏ(プロフ) - 泣いちゃいました。まーくんがしゃべった。隠し事してる最中だけど、気を許せて少しでも心開ける人たちに出会えて良かった。怖いのに最後までまだ出てこない潤くんのことも想って生きることを諦めないでいてくれて、智君が読者の代わりに制裁してくれました！流石長男 (2017年7月12日 18時) (レス) id: bfae0dae1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2016年10月23日 0時
