37話 水ポチャ ページ37
スーパームーンの夜空は明るすぎて小さな光の星はかくれんぼになってしまう。
「いつも見える星が見えないなぁ」
草の上に大の字で寝転がり雲一つ無い空に感想を述べる雅紀。
チャポン。
右足に水面を感じる。
「転んだぁ」
湖の際まで近づいていたとは気がつかずいて、智の
「まさちゃーん、戻ってこーい」
の声で足を止めた瞬間に夜露に濡れた草で靴を滑らせた。
右手に持っていたカメラを胸に押し当てて死守。
左手で草を掴んだ結果ひっくり返っただけですんだ。
いや、実際は右足だけ水に浸かってしまった。
後ろにずり上がり岸から離れる。
「靴に水が入ったし」
靴を脱いで水を捨てる。
濡れた靴下が気持ち悪い。
靴下を脱いでも濡れた靴が気持ち悪い。
「戻るか……」
撮影をいったん諦める。
いつもより明るいとはいえ夜の林。
プチ迷子です。
でも途方にはくれません。
なぜなら今回はお供の智がいます。
「さとちゃーーーーーん！」
「はーーーい」
名前を呼べば帰ってくる声。
声を道標に歩いていけば小さな灯りが見えてくる。
智が待つテントを発見。
濡れた靴下はポッケに隠しましょう。
「たっだいま」
「ハイおかえり」
「戻ってこられたぁ」
「迷子になってた？ほれテントに入っておいで」
「軽くね、無事に帰還いたしました」
テントに入るとランプの灯りで照らされた智はこちらを凝視していた。
「ん？」
「雅ちゃんどうした？」
「へ？どうしたって？智ちゃんこそそんな顔してどうしたの？」
智は指を指す。
雅紀の右足を。
「なんで右足だけ靴下脱いでいるんだ？」
「……靴を脱ぐときに脱げた」
「なんで右足ズボンの裾だけが濡れてんだ？」
「夜露かな？」
智は雅紀の靴を確認する。
靴下はない。
「背中が濡れてるじゃんか」
「えっとぉ」
「雅紀」
智の声が少し低くなりました。
これ以上の隠しごとはできぬよう。
「湖のそばを歩いていることに気がついてなくて」
「はい」
「足を滑らせまして」
「はい」
「見事にひっくり返りまして、右足だけ池ポチャならぬ水ポチャしました」
「ほほう」
「でも智ちゃんが呼んでくれたから完全に落ちなかったんだよ」
「でも落ちたんだ」
持ってきたリュックからフェイスタオルを出し智は雅紀の髪を拭いた。
「怒ってる？」
「怒ってねぇよ。ちょっとドキッとした。完全に落ちなくて良かったな」
他の兄弟たちは激怒するだろうけれどの言葉に雅紀は肩を落とした。
「怒られなくないぃ」
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むつき(プロフ) - tthisamiさん» 遅くなりましたが再開いたしました。 (8月29日 21時) (
レス) id: 56df0ba715 (このIDを非表示/違反報告)
tthisami(プロフ) - 再開嬉しいです。 (8月29日 20時) (レス) @page50 id: dba9116941 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はるさん» なかなか更新できずに申し訳ないです。少しずつですが頑張っていきますので！ (2021年3月30日 23時) (レス) id: 56df0ba715 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - むつきさん、更新ありがとうございます！とても嬉しいです。続きが楽しみです！ (2021年3月23日 4時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ちぇろさん» 5人が揃いました。北の地で兄弟たちの絆をお届けできたらと思います。 (2020年10月27日 0時) (レス) id: 7a3d8c34a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2019年8月2日 23時
