38話 頑張りどころが ページ38
テントの中、落ち込んだ様子の雅紀におにぎりを渡す智。
無言で受け取ると口いっぱいに頬張る。
ポットからカップへ豚汁を注ぐ。
暖かそうな湯気が上がる。
「……これ食べたら帰った方がいい？」
すねた声。
「……今帰っても後で帰っても説教地獄に間違いなし。なら撮りたいだけ撮ってからにしよう」
「いいの？」
「しばらく夜間外出禁止令がでるぞ。思いっきり撮っておけ」
「はいぃ」
豚汁の温かさが体の隅々まで染みこんでいく。
「いっぱい撮り溜めする」
「あいつらが雅ちゃんを叱るのは愛があるからだからな」
「うん」
「翔くんにとってはカワイイ弟で和には心の許せる兄貴。潤には頼れる兄貴なんだ」
智にとって自分は？
目が合うと優しく微笑まれた。
「宝ものより大事な弟だ」
「俺……高価じゃないよ？キラキラの宝石でもないし」
「雅ちゃんはダイヤモンド以上の宝もん」
「俺だけ？みんなは？」
「もちろんみんなも。大事で愛おしい。ずっと一緒に歩いて行きたい」
「ずっと一緒？」
「ずっと一緒」
ほかほか。
体は豚汁で温まり心は智の言葉で満たされていく。
でも……。
もしも智が東京の祖父母の元に行ってしまったらこの幸せな時間が失われることになる。
手放したくない。
「智ちゃんは今幸せ？」
「めちゃくちゃ幸せだな、雅ちゃんは？」
「めちゃめちゃ幸せ。この幸せがいつまでも続いて欲しい？」
「勿論」
智がそういうならいい。
智の幸せを守るため、この暮らしを守るため青田には渡さない。
「ただな」
「え？何智ちゃん？」
「今日は地獄だぞ。あいつらの説教は覚悟しろな」
覚悟したくない。
「さ、さとちゃんお願い。水ポチャのことは内緒にしてもらえない？」
「……無理だと思うぞ？あいつら探偵並みの洞察力は半端ない」
「バレなきゃ怒られないじゃん。頑張って隠すから！」
きっと無理。
「頑張ってみないとわからないじゃん」
頑張りどころが違うのではと長男さんは思いつつも、かわいい弟のお願いに頷いてしまった。
「バレたときは説教倍増だからな」
「うん頑張る」
だから頑張りどころが違うのだと苦笑い。
お空のフルムーンさんも智に同意したように光っていた。
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むつき(プロフ) - tthisamiさん» 遅くなりましたが再開いたしました。 (8月29日 21時) (
レス) id: 56df0ba715 (このIDを非表示/違反報告)
tthisami(プロフ) - 再開嬉しいです。 (8月29日 20時) (レス) @page50 id: dba9116941 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はるさん» なかなか更新できずに申し訳ないです。少しずつですが頑張っていきますので！ (2021年3月30日 23時) (レス) id: 56df0ba715 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - むつきさん、更新ありがとうございます！とても嬉しいです。続きが楽しみです！ (2021年3月23日 4時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ちぇろさん» 5人が揃いました。北の地で兄弟たちの絆をお届けできたらと思います。 (2020年10月27日 0時) (レス) id: 7a3d8c34a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2019年8月2日 23時
