【観覧車の泣き声は - A.M 】3 ページ3
＊
「……くん。…雅紀くーん。」
カーテンを閉め忘れたせいで
後光がさしたように光る看護師さんが笑う。
「起こしてごめんね。大丈夫？
どうかな？気分は悪くない？」
「…あ、うん。大丈夫。」
1時間後にはどうせまた頭痛と吐き気。
分かってるからいちいち言わない。
「よかった。じゃあデートできそうかな？」
ふふっと笑って看護師さんが動くと
後ろからもうひとつ影が現れた。
「おはよう、お寝坊さん。」
「…A、来てたの？」
ぎゅっと押された痣だらけの左手首。
チクリと走る小さな痛みは点滴を外す音。
いつまでも見慣れないAは
何年経ってもこの瞬間に顔をしかめる。
「来てたの？じゃないでしょ。
いらっしゃい、愛しのハニー(はぁと)
はい！りぴーとあふたーみー。」
外した空っぽの点滴を揺らしながら
声を上げて笑う看護師さんが部屋から出ていく。
「もうテスト前だろ？」
音もなく閉じるスライドドアを見送って
眩暈がしないようゆっくりと体を起こす。
「…大丈夫！ほら、私賢いから？笑」
視界の隅にもどかし気に映る
ぎゅっと握りしめられたAの手は
今俺が一番後悔していることの証。
あれはもう…2年前？
なんとか高校受験できて
もうすぐ高校生になれるって浮かれる
一番楽しい春休みなはずの3月30日。
弱る免疫力のせいであっさり肺炎に感染して
そのまま急激に崩れた体調で長引く入院。
入学式もクラス発表も体育祭も夏休みも
嫌いなテストでさえ夢みたいに消えていく。
思い通りに動かない体に苛々して
支えてくれたAの手を払いのけた。
あの日以来触れてこないA。
Aに触れることができない俺。
＊
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でこぼこ(プロフ) - 橘花さん» あっちもこっちも、いつもコメントありがとうございます(*'▽'*)そう言えば潤くんは月嘘でも幼なじみポジションだ！どことなーく、私の幼なじみと似てるから重ねがちなのかも（笑） (2020年3月28日 20時) (
レス) id: deca25d402 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - 潤くん…！！お互い気性荒目の猫ちゃんでしたね♪かわいいほっこりするお話をありがとうございます！「幼なじみ」って近いような遠いような…ってジレンマな壁になりますねぇ。潤くんとおばさんのお約束かわいかったです！ (2020年3月27日 21時) (レス) id: c96c7aeb8a (このIDを非表示/違反報告)
でこぼこ(プロフ) - 橘花さん» 帰ってくる場所の確保に努める、っていい言葉ですね。来年以降も私たちにはそんな光栄な仕事があると思うと、たしかに燃え尽きるわけにはいかない！私も心の余白を少し残しつつ、フラットな気持ちで5人と走れたらいいなと思います(^^) (2020年1月14日 7時) (レス) id: deca25d402 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - コメントできてませんでした(汗)来年以降のことは一旦考えないようにして…、彼らと同じように、燃え尽き症候群になる手前まで追いかけて、燃え尽きることなく帰ってくる場所の確保に努めようと思っています。彼らとたのしい思い出をたくさん作れるようにしましょうね♪ (2020年1月11日 16時) (レス) id: c96c7aeb8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：でこぼこ | 作成日時：2018年6月8日 14時
