でっかい愛

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連れ立って、本社ビルを出た。


てっきり、

会社の近くの居酒屋とか焼き鳥屋とか、ラーメン屋とか？

そういう類の店に行くんやて思い込んでた。


ごめんやけど、重岡にお洒落な印象全くないし。


営業課のヤツらで、

駅前の飲み屋で飲んでるん、
何回か見かけたことあるしな。


そんな俺の予想を裏切って。


「ここでええ？」


重岡に連れられて入ったのは、
今、流行りのカジュアルフレンチ。


洗練されたデザインの店内。


周りを見ても、
カップルと女性客しかおらん。


俺の方がそわそわしてまうわ。


「重岡、意外とええお店知ってるねんな」


「お客さんに教えてもろてん」


「そっか、そうやんな、営業マンやし」


「神ちゃん、こういうとこ似合うし。
好きそかなって」


「そんなええイメージ持ってんの？
俺の行きつけ、ほぼチェーン店やで」


「そうなん！
気取ってしもたやん！」


にひひって、真っ白な歯を見せて笑う。

無駄に爽やかやから、困るねん。


「けど、たまにはこういうお店もええな。
何もかも、めちゃくちゃ美味しいし・・・」


「やんな！」


最初は苦いワインで我慢してんけどさ、

２杯目は、甘めのカクテル頼んだら、
案の定、揶揄われた。


「見た目通り、可愛ええもん飲んで」


なんて言われたらさ、
浮かれてまうやん・・・


仕事の話、全然、出えへんしな。


意図的に、重岡がそうしてるような気がする。


休みの日、何してるとか、
子供の頃の夢とか、
高校大学時代のこととか。


いろんなこと教えてくれて、
音楽っていう、共通の趣味も見つかったり。


俺のことは、
敢えてなんか、
あんま突っ込んだことは聞かれへん。


その優しさが心地良くて。


勝手にデート気分なってたとこ。


「さっきの子な、川瀬くんな、」


いきなり、現実に引き戻された。


「ああ、うん、別に俺に言い訳せんでええよ。
付き合うてたんやろ」


傷が浅く済むように。

防波堤を積み上げてく。


「ちゃうって！
後輩として可愛いがっててん。
勘違いさせてしもたみたいで」


「そっか。
重岡は女の人が恋愛対象？なんや・・・」


俺とは、混ざり合わへん、運命。

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