でっかい愛

３ ページ17

「無理したらあかんよ。
強い薬やから。
その分、副作用もきついねん」


濱ちゃんが俺の背中をとんとん、と、優しく撫でてくれる。


「次の患者さんの予約入ってて、
送ってあげられへんねん。
やから、照史に頼んだ。
もうすぐ来るから」


「ここに・・・？」


「うん、頼れるの、照史だけやろ？」


俺の存在自体が、みんなの迷惑になる。

悔しくて、拳を握りしめる。


濱ちゃんが出て行って一人になったら、涙が溢れてきた。


設計室の仕事はもう無理かもしれん。


重岡に会いたい。


やけど、こんな俺じゃ、会われへん。


苦しくて、息の仕方も忘れてしまいそう・・・











病室に飛び込んで来るなり、
俺をふわっと抱きしめた、あっくん。


久しぶりの、あったかい匂いに、
どうしたって、ほっとする。


嫌いになったわけやないもん。


恋とは違うかった、

同じ道を並んでは歩いていかれへんこと。

気付いただけで。


「もんち、ほんまに心配した・・・」


「ごめん。
連絡無視したりして」


「ううん、ええねん。
内緒で引っ越しされたのだけは結構、参ったけどな」


あっくんが、くしゃって笑う。


頼りになる、安心出来る。


日に焼けた、この笑顔が、眩しかった。


「あっくん、俺な、好きな人出来てん」


「え・・・？」


「ごめんな、内緒にしてて。
やから、あっくん、俺に構わず結婚してな」


「もんち、ほんまなん？
その人はもんちを幸せにしてくれんの？」


「アルファの彼氏やで！」


「ほんまにアルファの彼氏に出会えたんか？」


「なんで疑うんよ」


「やって、ヒートで倒れたって・・・」


「まだ、深い関係ちゃうねん。
けど、ほんまやで！
好きって言われてん。
俺もずっと好きやった人」


淀みなく出てくる嘘。


「ほんま？どんな人なん？」


あっくん、傷付いた顔した。


それに、まだ疑ってるみたいや。


「同期でな、年齢は一個上。
浪人してるんやって。
営業のエースやねんで。
明るくて屈託ないけど、
不意に熱くて男らしいて。
そんで、なんでってぐらい優しいん。
笑ったら片方だけほっぺたの下に笑窪出来るん。
口がおっきくて歯が多くてさ、
陽だまりみたいな香りがする・・・」

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