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とにかく、今は早いところトントンを追い返さなくては。深くソファーに沈ませていた腰を上げ、窓の縁に肘をつかせる彼の元へと歩みを進める。何を勘違いしたのか、ぱっと表情を明るくさせたトントンが口元を緩めさせたので、思わず手に持っていたカルテでぱこんっと頭を軽く叩いてやった。
「ほら。早く帰って」
「ええ、まだ来たばっかやで？寂しいやんか」
「言ったでしょ、今日は助教が―――」
と、言いかけたそばからコンコンと医務室の扉がノックされた。まずい、来てしまった。慌てて窓を閉めれば、むすっと口を尖らせたトントンが私の視界からぱっと姿を消す。しかし、視線を下げればその場でしゃがみ込んでいる彼がいて、私は盛大にため息を吐き出した。まさか、そこに隠れて待っているつもりだろうか。
「A、いないのか？」
「……いえ、いますよ。お入りください」
立てつけの悪い扉がきぃ、と音を立てて開かれると同時にチーノ助教が顔を覗かせる。「いるなら返事をしろ」と言われ肩を竦めさせた私はこっそりと窓の外を睨んでからチーノ助教へと向き直った。
「欲しいと言っていた資料だ。机に置いておくぞ」
「わざわざすみません、ありがとうございます」
「構わん。それより、あの新兵たちと会ったのか？」
「え、？」
チーノ助教からの唐突な言葉に思わず背筋が伸びる。何故、今そんな話が彼の口から飛び出すのか。
「最近、何やらお前の話で盛り上がっていてな。会わせろと執拗いもんだから散々加点してやった」
「……なるほど。トントン新兵と鬱新兵には会いましたよ。どちらも治療の為に、ですが」
「ああ、そう言えばトントン新兵はこの間訓練中に怪我をしていたな。……鬱新兵はなんだ？」
「自由行動中に転んだと聞きました」
「ふは、間抜けなヤツめ」
一瞬頭を過った嫌な想像とは遠く離れた内容に、心の内でほっと息をつかせる。なんて心臓に悪い。私は今まで静かに、何の不自由もなくこの医務室で過ごしてきたというのに、トントンのせいで変に居心地が悪くなってしまった。
しかし、どうせ彼はあと三日の間にこの基地から姿を消す。きっと大人しくしているという選択肢はないのだろうから、刑務所か、外の世界か。それまでの辛抱だと思えば、まあ大した弊害でもないか。
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鯉口(プロフ) - 赤羽 紫音さん» コメントありがとうございます！ (2020年4月4日 3時) (
レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
赤羽 紫音 - 凄い！ (2020年4月4日 2時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - ノアさん» 主催者の鯉口です。コメントありがとうございます(*^^*)まだまだ続きますので更新をお待ちください！ (2020年2月29日 1時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
ノア - めっちゃ好きです！ 文才分けて欲しいぃ((( 毎日、楽しみにさせてもらってます！ 更新頑張って下さい！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: 47bc0266fa (このIDを非表示/違反報告)
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