ココロごと（tn） ページ6
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ここ最近、随分と外が騒がしい。志願兵の六名が上官たちに隠れ、何やらこそこそとやんちゃを働いているようだ。私はそれを密告する気はなく、何度か目にしてしまった彼らの悪行には素知らぬ振りを貫いてきたが、だからといってこうも堂々とされるのは如何なものだろうか。
「こんばんは、A先生」
「……こんばんは、第二分隊長さん」
開け放っていた医務室の窓の外からひょっこりと顔を覗かせ、こちらに片手を振るひとりの兵士に深いため息を吐き出す。就寝時間はとっくのとうに過ぎているのだから、彼が外をほっつき歩いているのはどう考えても規律違反だ。
「名前で呼んでくれって言うたやろ」
「大人しく部屋に戻るならそうしてあげる」
「A先生ともうちょい話したら戻るで」
「……トントン。そろそろ助教がいらっしゃるから今日は帰りなさい」
「ふふ、A先生はほんまに優しいなぁ。わざわざ教えんと、ほっときゃええのに」
「調子乗らないの。君たち、私が報告したら即刑務所行きなんだからね」
「でも、黙っててくれるんやろ？」
「……はあ」
へらりと余裕な笑みを向けてくるトントンは、あのやんちゃしている六名のうちのひとりだ。二日前、訓練中に怪我を負ってしまった彼がこの医務室を訪れ、そこで初めて顔を合わせたのだが、何故かその日以来こうして窓の外から顔を覗かせるようになってしまった。これは懐かれた、と言えばいいんだろうか。
医官である私が彼らと関わる事を許されているのは、治療の為にここを訪れた時だけ。業務外でトントンと会話を交えてしまえば「必要以上に接触するな」という教官からの命令に背くことになってしまう。
脱柵の為に夜な夜な動き回る彼らの姿を黙って見過ごしている時点で違反なのだが、それはまあ何とでも誤魔化せるだろう。しかし、この会話を聞かれてはまずい。無視を決め込めばいいだけなのだが、どうにも私はそれが出来ずにいた。
「なあ、やっぱり気は変わらんの？」
「変わるわけないでしょ」
「どうしても？」
「しつこいよ」
「……もう時間がないねん」
「ここを出たいなら、勝手にどうぞ。私を巻き込まないで」
昨晩、トントンは私にとんでもなく馬鹿げた提案を持ち出した。「一緒に脱走しよう」なんて、ほんと、思い出すと笑ってしまうほどに馬鹿げている。何で私がそんなこと。そう呆れるのと同時に、私に手を差し伸べて笑った彼を見て僅かに揺れた心臓を憎らしくも思っていた。
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鯉口(プロフ) - 赤羽 紫音さん» コメントありがとうございます！ (2020年4月4日 3時) (
レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
赤羽 紫音 - 凄い！ (2020年4月4日 2時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - ノアさん» 主催者の鯉口です。コメントありがとうございます(*^^*)まだまだ続きますので更新をお待ちください！ (2020年2月29日 1時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
ノア - めっちゃ好きです！ 文才分けて欲しいぃ((( 毎日、楽しみにさせてもらってます！ 更新頑張って下さい！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: 47bc0266fa (このIDを非表示/違反報告)
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