その言葉に救われる ページ21
数分間という長いとも短いとも取れる思考の後、彼は思いついたようにそう言った。
いきなりそう言われても…という思い半分、お誘いをありがたく思う気持ち半分でなんとも言えない声を出してしまう。
その声に少し微笑んだ彼は、優しい声で私に言った。
「多分またあんた命狙われる可能性あるで。ここにずっとおるのはホンマに危ない。すぐにでも移動した方がええ」
『…っ、でも、』
「大丈夫や。入国については俺が上に言っといたるから。そのことについては何も心配することは無いで。仕事ももちろんこっちが用意したる」
『そ、うじゃなくて、あの、私…』
「―――ここやなくて、俺の国でその手腕を奮ってみいひんか？武器職人さん。」
…………息が、止まった。
手を取られ、優しく引っ張られる。
振りほどこうとすれば容易く振り払えただろうに、私にはそれが出来なかった。
―――いつから、いつから気づいていたの？
彼に出会ってからずっとうるさくて仕方の無い心臓がいちだんとうるさくなる。
彼が気づいていないと思っていた私の本来の職業を言い当てた彼に、素直に驚いた。
私が毒を盛られていたから？
私の部屋の設計図が見えたから？
私の部屋から火薬の匂いがしたから？
だから、武器職人だって気がついたの？
それとも。
―――それとも、ずっと初めから？
「絶対に俺らは裏切らへんし、あんたを軽蔑したりもせん。俺らの国で、その実力で、俺らを助けてくれへんか？」
彼の言葉が私の中にじんわりと染みていく。
私の職業を知ってなお、私の手をとる彼の背にまたときめきながら、私も強く彼の手を握り返した。
イフリートは嬉しそうに一鳴きして、私たちの後をついてきた。
『これから、よろしくお願いします』
「おん。よろしくな」
私は、やっと自分の職業を心から誇れるような気がしたのです。
「―――もしもし、グルッペンか？」
《あぁ、兄さん。どうしたんだ？》
「例の武器職人と接触したで。…すぐに国に移動してくれるってさ」
《はぇー…流石やな》
「今回は運が良かったな」
《………それで？兄さんから見てどうや。その武器商人は》
「あー……そうやな…」
ふぅ、と彼は一息煙を口から吐き出す。
遠くで嬉しそうにイフリートを撫で回す彼女を見て、彼はうっすらと笑みを浮かべた。
「ええ子やで。ホンマに。お前らには勿体ないくらいや」
電話口の向こうから、どこか楽しげな笑い声が聞こえてきた。
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ここ - htrn難民です…いやぁ…最近涙もろくなったかもしれないです… (2022年5月23日 0時) (
レス) @page17 id: 89e416f6d5 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - 彗月さん» コメントありがとうございます！喜んでいただけたら嬉しいです！！ (2021年1月31日 16時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
彗月 - niさん難民です…。こんな企画があったなんて！重宝させていただきます。 (2021年1月31日 11時) (レス) id: dea094a662 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - あまいひとさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてこちらも嬉しいです！ (2020年9月5日 18時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
あまいひと - rnrn難民です、、。ヘッダーからも消えて死にそうだったので嬉しいです、、。ありがとうございます(昇天) (2020年9月5日 12時) (レス) id: e438e75949 (このIDを非表示/違反報告)
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