赤目駅できみを待つ。 ページ2
「大丈夫？ 最近ぼーっとしてること多くない？」
仕事の休憩時間に同僚から声を掛けられる。掛けられた声に大丈夫だと微笑みを浮かべたが同僚の心配は晴れなかったらしい。
「無理はしてないよ。ただ考えることがあってさ」
「悩みかなにか？」
「……そうなるのかな？」
曖昧な表現。悩みかといえばそうだし、ただの考え事かといえばそうなってしまう。だって、
「最近、ふとした時に頭に声が聞こえてさ。それは聞き覚えがあるはずなのに…どうしても誰のものだったか思い出せないんだ」
「………病院行く？」
「言うと思った」
恐る恐る同僚が私の額に触る。
「熱はないし…現実主義者のあんたがそんなこと言うとは…」
「うるさいなぁ。だから悩みというより考え事なんだって。記憶を必死に手繰り寄せてるの」
「ふーん。で、例のその声はあんたになんて言っているの？」
「"帰っておいで。待ってるから"っていつも言ってくる」
「…それ本当に大丈夫…？ 幽霊とかそんなんじゃない…？」
「…さあ？ あ、休憩時間あと残り10分しかないよ。」
同僚はうわっやばい！と声を出して立ち上がる。持っていたおにぎりを急いで口にいれて同僚の後ろをついていく。そんな時またあの声がした。
───君が、覚えていなくとも。俺はずっと覚えているから。
少しだけ寂しさを含んだ声だった。決して届かぬ何かに手を伸ばして諦めるような声。その声の正体を私は確かに知っている。…知っていたのに、思い出せそうになかった。
.
.
.
深夜に携帯の着信が鳴り響く。一体こんな時間になんなんだと体を起こして、暗闇の中当てずっぽうに手を伸ばす。何度か暗闇を行き来させて無機質な携帯を手に入れることが出来た。
「………」
何件もの不在着信。それも毎回留守番電話付き。数年は見ていなかった電話番号がそこに表示されていた。聞かないで寝ることも出来たが、明日は休みということもあり無意識のうちに留守電を再生してしまう。
「…A。あんた元気にしてる？ 父さんが倒れたの。あんたが地元を、私たちを嫌ってることは分かるけど…最期に会いに来て欲しい」
どんな時も私を見ぬフリをしてきた都合のいい母親の声が、私の大嫌いな父親を心配している。何を今更と思い、留守電を止める。同じ番号が続く中、非通知から電話がありそれも間違えて再生してしまった。
「そろそろ、思い出せそう？」
なんでも見透かすような男の声。ぴり、と頭が痛んだ。
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ここ - htrn難民です…いやぁ…最近涙もろくなったかもしれないです… (2022年5月23日 0時) (
レス) @page17 id: 89e416f6d5 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - 彗月さん» コメントありがとうございます！喜んでいただけたら嬉しいです！！ (2021年1月31日 16時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
彗月 - niさん難民です…。こんな企画があったなんて！重宝させていただきます。 (2021年1月31日 11時) (レス) id: dea094a662 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - あまいひとさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてこちらも嬉しいです！ (2020年9月5日 18時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
あまいひと - rnrn難民です、、。ヘッダーからも消えて死にそうだったので嬉しいです、、。ありがとうございます(昇天) (2020年9月5日 12時) (レス) id: e438e75949 (このIDを非表示/違反報告)
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