斜陽2【中原中也】

第58話 ページ8

貴女side





貴女「あの……中原幹部、」



中原「…あァ…？」




しばらくして彼は顔を真っ赤に蕩けた顔をした




貴女「…中原幹部」


中原「んだよ…？」



貴女「もうワインはそのくらいにした方が…」


中原「なんだァだざい…手前まだいけそうだなあ」


貴女「あ…はい。私は強いということがわかりましたが。」


中原「俺ァまだいけるぜ」




そういい最後の一口を流し込む




ﾊﾞﾀﾝ




中原「………」



貴女「よっっわ」




机に突っ伏してすやすや云い出した中也さん




貴女「………中原幹部」


中原「……まだ…のめ…る」


貴女「………はぁ」




とりあえず彼は放って片付けをした



腕をまくり皿を洗っていれば



一緒にご飯を作って片付けした事を思い出す





貴女「………」




楽しかった…



楽しかったけど




『手前は大切な部下だ。それだけだ』




そう云われてしまえば何も云えない




そして


中也さんと一緒にいたい理由を


あの頃の私は分かっていなかった





だから何故と問われても



『云えない、です』




答えられなかった




貴女「今なら………わかるのに」




だが気づいた所で伝えられない




だから私は『普通の部下』になった



自分の家を持ち上司に敬意を示す呼び方で





貴女「これで………いい。」




その言葉を水道水が一緒に流してくれる


水を止めれば静かになったリビングは中也さんの寝息が響くのみ





貴女「……中原幹部」


中原「………」


貴女「こんな所で寝たら風邪ひきます」


中原「………」




ダメだ



完全に酔いつぶれている




貴女「……持てるかな…」




前は重力で軽くなっていたからな…


今回はそうはいかない




だが見た目は小柄だから大丈夫だろう



そう思い手を伸ばす





中原「…A……」



貴女「っ」



中原「…何処行くんだ」




突っ伏したまま



冬の朝のような瞳がうっすらと開いた





中原「A……」


貴女「…何処もいきませんよ」




だけどその瞳は私を捉えず

虚空を見つめ潤い始める





中原「…頼む…。行くな。」



貴女「中原幹、……」





やがて静かに閉じられたまつ毛が艶やかになり


目頭から雫が滑り落ちた








貴女「…………中也さん…。」

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