斜陽2【中原中也】

第57話 ページ7

貴女side





中原「どした？座れよ」



貴女「…すごいですね」



中原「……作りすぎたか」





苦笑いする彼はワインを開けグラスに注いだ



貴女「…………」




そのワインは


二人で買い物に行った時に買ったものだ





中原「グラス」


貴女「あ…ありがとうございます」




透明なグラスに深い紅が注ぎ込まれる




中原「そういやあれから飲んだのか？」



貴女「……いえ」



中原「初か。いいぜ、飲み明かそう」




優しく笑った彼はグラスを手に取り少し掲げた




中原「おかえり」


貴女「っ、」




彼よりグラスを下げ傾ける



甲高く硝子がぶつかった音が心地いい





そこからしばらく無言だった



皿とナイフが擦れる音が響くだけの静寂を裂いたのは



中也さんだった





中原「最近どうだ」


貴女「…仕事ですか？順調です」


中原「そりゃ上司の俺が良く分かってる。


手前自身の話だよ」


貴女「……どう云う、」


中原「困ったこととかはねェか。」


貴女「………特にありません。あなたから叩き込まれた事を活かしていれば大抵解決するので」


中原「そりゃ仕事の話だろ

まァ良い。なんかあったらすぐ云えよ」


貴女「…分かりました」




再び沈黙がくる




貴女「…………」



中原「…………」



貴女「……………中原幹部」



中原「ん？どした」



貴女「……あなたこそ…最近どうですか」



中原「…仕事か？」



貴女「……首領から少し話を聞いて」



中原「…あー………」





手を止め目を細めた彼が困ったように笑った





中原「俺の方はてんでダメだ」



貴女「…何故です？」



中原「………………さァな。なんで…だろうな」



貴女「……………」





伏せられたまつ毛が悲しみを帯びている


そんな表情は初めて見る





貴女「…中原幹部っ」





胸が締め付けられるような感覚と


これ以上そんな顔をさせたくなくて少し大きな声が出た





中原「なんだ？」



貴女「あ……いや……えっと…


………か、乾杯しましょう」




中原「………」





目をぱちくりさせた後嬉しそうに口の端をあげ




中原「あァ。」




グラスを傾ける





彼が何に乾杯して


私が何に乾杯したは




当の私達にも





分からない＿＿＿＿

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