斜陽2【中原中也】

第56話 ページ6

貴女side





仕事はさっさと片付いたのに



帰る足取りが重い




貴女「……………はぁ…」




見慣れた少し懐かしくも思うような立派な建物



その入口の前で行ったり来たりを繰り返す




貴女「なんて云えば……」



『いやあ懐かしいですね、また一緒に住むなんて』


いや違う…


『仕事疲れました、久々ですね』


いや違う…




貴女「ダメだ…。去年から仕事でも業務連絡しかしてこなかったから…」




もういっそ本部のどっかで…




『ボスの命令だよ』




貴女「分かってますよ！職権乱用ロリコンが！」




ｶﾞﾁｬ




中原「何やってんだァ、手前」



貴女「な、中原幹部っ」




突然扉が開き驚いた顔で出てきた彼は


シャツの腕をまくり髪が束ねてある



料理をしている時の姿だ…





急に懐かしさのようななんとも云えない気持ちが込み上げ言葉を失う





中原「一人でデケェ声で何やってたンだよ」


貴女「あ…いや、」



ため息をつきながら彼は私の大きな荷物を持ち上げた




中原「来たんならさっさと呼べ」


貴女「…ありがとうございます」




中へ入っていく彼を呆然と見つめる



中原「太宰？入んねェのか」


貴女「あ…お、お邪魔します…」


中原「家が無くなったんだってな」


貴女「無くなったというか、なんというか…」


中原「そんな最悪な災難もあるんだな」


貴女「最悪…そうですね最悪です」




中原「部屋、ここだろ」


貴女「え…」




彼が立ち止まった部屋は前に私が使っていた部屋だった



中に入ると私が出ていった頃から何も変わっていなかった




中原「荷解き、しとけ。」


貴女「あ、はい」




部屋を出た彼の足音がリビングへ消える




貴女「…………私の部屋だ…」




部屋を見渡すと



初めてここへ来た時のことや


一緒に過ごした時が鮮明に蘇る





そして部屋にまで届く食欲をそそる匂い





貴女「………………やめとこう


私はただの部下だ。」





首を振り荷物の整理をする



と言っても必要最低限の物しかないためそれはあっさり終わった




貴女「……………」




ｶﾞﾁｬ





貴女「…中原幹部」


中原「おう、終わったか」


貴女「手伝います」


中原「いや、こっちも終わるぜ」




並べられた豪華な料理



そして




ｺﾄ




中原「初めて開けるワインだ」

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