斜陽2【中原中也】

第85話 ページ35

貴女side





貴女「大丈夫ですか」



中原「…んとにお前は俺を振り回すのが上手ェな」



貴女「何の話ですか」





水を取りに行こうと立ち上がれば手首を掴んだ中也さんが不安そうな顔で云った





中原「どこ行くんだ」


貴女「水を飲んだ方が良いかと思って、」



中原「大丈夫だ。」


貴女「でも、」


中原「それより、離れるんじゃねェ。」


貴女「、」





貴方のその顔に私は弱い





中原「ほら、こっち来い。」


貴女「…こっちって、」


中原「ここ。」


貴女「……」





だけど中也さんが促すのは彼の足の間。彼の目の前だった





中原「来いよ」



貴女「あっ、」





手首を引っ張られ私はポスリと中也さんの中に収まった




貴女「中、」


中原「Aー…」




後ろから抱きしめられ体が強ばる





中原「力抜けよ」


貴女「だって、」


中原「こんくらいいいだろ。これでも我慢してんだ」


貴女「何を云って」


中原「まじでしんどかったんだぜ…会いたくて」


貴女「……それは私も同じです。」






この甘い香りを、温度を、声を、どれほど待ち焦がれたか…





中原「…で、異能は扱えるようになったのか」


貴女「勿論です」


中原「重力操作もか？」


貴女「…………一応。」


中原「なんだ一応って」


貴女「…再現度の話は覚えていますか」


中原「ん？あァ、異能の力の差ってやつだろ」


貴女「はい。…重力操作は力が強大です

…使えば反動がきます」


中原「反動？」


貴女「副作用のようなものです」


中原「きついのか」


貴女「……大したことありませんよ」


中原「…嘘っぽい。まァ使うことなんて無いだろ」






首に顔を埋める感覚がくすぐったい




中原「…いい匂い」


貴女「なっ、」


中原「ずっとこうしていたい」


貴女「……なんか変ですよ中也さん…」


中原「やっと俺の女になってくれたかと思えば無期限で離れやがって

そりゃ俺でも変になる」


貴女「………」



中原「A。」



貴女「…はい」



中原「おかえり」



貴女「…………はい。」





落ち着く声と香りと温度



地下とは文字通り天と地程の差がある空間




私は再びこの手に戻した幸せを噛み締めた





探偵社である出来事があったとは知らずに＿＿＿＿

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