吉良吉江は静かに暮らしたい (ページ8)

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吉良吉江は静かに暮らしたいページ8

帰り道、前を歩く男に目が行く。

(「あれは殺すべきではない。」)

先日雑誌で見たジェノスとかいうヒーロー。

有名人が失踪した等と分かれば大事件になる。

殺さずにはいられないが後先考えず殺すことはしない。

これも平穏な生活を送るためだ。

負ける気は勿論しない、けれど争いは次の争いを呼ぶため極力避けたい。

(「早く帰ってマービンと過ごそう。」)

ポーチの中で待ち続けるマービンを思い、今日の夕飯はステーキにしようと考える。

ゾンビマンさんも肉類が好きだったし丁度良いだろう。

「マービン、後でマニキュアを塗ろうね。」

「・・・」

夕飯を食べマービンとの一時を過ごす大切な時間。

青白い右手を優しく撫で、今日あった出来事をとりとめもなく話すのが日課だ。

「何時も思うがマービンはないだろ。」

「マービンは私の恋人です。ゾンビマンさんはあくまで同居人ですから。」

「あっそう。なんの反応も返さない右手のどこが良いんだか。」

ゾンビマンさんの言葉を聞き流し今日のマニキュアは何色にしようかと悩む。

先週はモスグリーンだったし同じ寒色系にしよう。

ウルトラマリンブルーを取ろうとしたその時、ゾンビマンさんの右手がピジョンブラッドを抜き私に渡した。

「なんの真似ですか？」

「次いでだ、俺にはその色を塗ってくれ。」

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