キールに沈んで (ページ29)

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そんなに言いたくないなら無理しないで
そう伝えようとした時
今まで以上に強く抱き締められた

『北山さ…』

「好きだ」

『…え？』

「Aが好きだ」

嬉しかった

傍から見たら、こんな状況で今さらと思うかもしれないけど

少なくとも
私は嬉しかった

『ねえいつから？』

「は？」

『いつから？』

「Aが藤ヶ谷に好き好き言ってる時から」

『そんなに前から？』

あの頃の私は猪突強進すぎて
北山さんの印象は薄い

ついさっき気持ちに気付いた私とは大違い

「A…？」

おそるおそる名前を呼ぶ北山さんがなんだか
可愛いらしくて私も素直に言えた

『私も北山さんの事が好き』

「本当に….？」

『なんで信じてくれないのよ』

「なんか実感ないわ」

『本当に好きだよ』

「もう1回言って」

『北山さんが好き』

「宏光」

『え？』

「宏光」

『宏光』

「………違え」

『ふふ』

何て言って欲しいのか分かりやすい
今の私はご機嫌だから言ってあげる

『宏光の事が好き』

ちゃっと目を見て伝えてあげると
彼もふわりと微笑んで私にキスを落とす