キールに沈んで (ページ23)

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「じゃ」

そう言って別々に乗ったタクシー

この後どうするかなんて話してなくて
北山さんの連絡先すら知らないから
泣きそうになりながら自宅へ帰る

『連絡先くらい教えろよバカ』

正直ちょっとだけ期待していた

仮にもし、好きだと言われたら何で返事しよう
そんな風にも考えてた。

『私、なんて返事するんだろうな…』

ソファに寝転がって目をつぶって見える世界を遮断する

それなのになんでか涙が出てくるから
音も遮断する

「何泣いてんの？」

音を遮断していたはずなのに
ふいに声が聞こえてゆっくり目を開けると
超ドアップの北山さん

驚くまもなく
ちゅっと軽く口付けて微笑む

『何で居るの？』

「佐伯さんが俺に預けてくれた』

人指し指でくるくると回されているのは
マネージャーに渡していた家の合鍵

「佐伯さん怖えーな。全部お見通しだもん」

鍵をテーブルに置くと私に覆いかぶさってくる
体重をかけられると流石に重い

くるりと体を返して
私と北山さんの位置が反転する

「で、泣き虫Aちゃんは、どうして泣いてたの？」

私をぎゅっと抱き締めて優しい声で聞いてくるから
もしかしたらい同じ気持ちなのかなって思った

少しだけ体を起こして彼の目をじっと見つめる

彼の気持ちが読み切れない
けど

『分かんない』

「え？」

『なんで泣いちゃったか分かんない』

「じゃあしょうがねーか」

あぁ、好き。

そんな思いをあいったけ詰め込んで
今度は私から口付けを